転職ノウハウ

mixiチェック

中途採用の面接で言っていいこと悪いこと

いきなりではあるが、結論から述べるとしよう。あなたが中途採用の面接を受ける際に述べなければならない最も重要なことはただ一つ、自分には何ができるかということだ。

それを説明する職歴やスキルについては履歴書に記載しておけばいい話だし、その他の労働条件については聞かれれば答えればいい。とりあえず、何としてでも伝えて理解させるべきことは、何ができるかの一点だけだ。

このことを理解できているなら、中途採用の面接はずいぶんと合理的なものとなるはずだし、20代のキャリアデザインも効率よく進められるはずだ。というわけで、今回は中途採用の面接そのものについて取り上げてみたい。

中途採用と新卒採用との違い

本来であれば、採用面接では「何ができるか」だけをシンプルに突き詰めればいいのだが、日本は新卒一括採用がベースなので、無色透明な新人を採って組織内でゼロから育てるという風にワンクッション置かれる。だから、新卒採用では即戦力性などはほとんど要求されず、代わりに地頭の良さや組織との親和性といったポテンシャルが重視されてきた。

求められてきた人材像のイメージは、一定の偏差値以上の学生で、勉強だけではなく、それなりの社会経験も積めている人材が該当する。新卒の就活時に『成功体験』やら『リーダーシップ経験』やら、よくわからない抽象的な質問を誰でも一度くらいされたことがあるはずだ。あれは人事がポテンシャルの有無を見極めようとする質問の典型と言っていい。

一方で、中途であれば既に一定の職歴を積んでいることが前提だから、見極めるのは単純に「何ができるか」だけでいい。新卒と比べると、実に明快な選考基準と言えるだろう。

このことは、面接を担当する面接官の人選に端的に表れている。新卒のポテンシャル採用という、ある意味きわめて曖昧な判断を下すのは、そういう訓練を積んだ人事の担当者が行う。
(誰にも白黒つけられない判定を下す汚れ役とも言えるが)

中途採用の場合は、採用後に配属される職場の管理職が行うのが一般的だ。その業務で評価されるスキルを判定するのだから当然だろう。「何ができるか」をとにかくしっかりアピールしろというのは、これが理由である。

聞いておきたいことはどんどん質問すべし

もちろん変わるのは企業側のスタンスだけではない。面接とはあくまでも相互発信が基本である以上、求職者のスタンスも新卒とは違ってずっと現実的、個人的なものであってまったく問題ない。

例えば、新卒採用の際に勤務地や転勤事情について突っ込んで質問することは(あくまで全国転勤ウェルカムな総合職が前提の場合が多いため)お勧めしないが、中途採用においては別に問題ではない。

一定の年齢に達した社会人ならそれぞれ家庭の事情があるのは当然であって、それへの配慮を求めるのは自立した人材としては当然の要求だからだ。
(逆に確たるスキルを持っているであろう本連載読者にまで新卒並みの滅私奉公を要求するようなダメ会社は、とっとと辞退するとよい)

「実家の両親の近くで働きたいから」や「子供の教育上、転勤の少ない環境に移りたい」といった理由は転職理由としてはごく一般的なものだ。さらに言えば「もっと高給が欲しいから」といった前向きで素晴らしい理由と同様に、「今の職場は長時間残業が慢性化しているから」や「有給が満足に取得できないから」といった事情も、筆者はきちんと告げた方がいいと考えている。

確かに、人事担当の中には、キャリア採用においてもガツガツ働く姿勢を評価する者がいるのも事実だ。だが、給料を求める姿勢は良くて時間を求める姿勢はダメだというのは矛盾している。労働時間を抑制して時間当たりの賃金を引き上げたいというのも、立派な肉食系の動機だというのが筆者の意見だ。

そもそも、いまどき長時間残業をよしとするような会社に入ってもロクなことにはならないから、それで落とすような会社には入れてもらえなかったことを感謝するくらいでちょうどいいだろう。

キャリア採用こそ本当の意味での“就活”

最後に、実際のケースを紹介しておこう。中途採用をスタートしたばかりのある企業から相談を受けた時の話だ。

最終的に内定を出す予定の2名について意見を求められた筆者は、内1名に留保をつけた。1名は一流大卒のキャリア官僚OBのA氏で、年齢も20代後半と将来性がある。もう一人は中小企業で叩き上げた30代の人材B氏で、スキル的には申し分ないが、より良い処遇と労働環境を求めて応募してきた人材だ。

採用側としてはポテンシャル的に圧倒的に魅力を感じる前者が本命で、モチベーション的にやや弱気に映る後者は数合わせくらいのスタンスだったが、筆者のスタンスは、後者が一押しで、前者は不採用にしろというものだった。

冒頭で述べたとおり「何ができるか」をシンプルに求めるなら、いくらポテンシャルがあろうと20代の人材にはそれほどの魅力は感じられない。しかも、なぜ霞が関を辞めてここに来るのか動機がまったく見えてこない。こういうタイプは1年持たずに離職するだろう。

一方で、より良い労働環境で就労したいという後者は素晴らしいモチベーションであり、スキル的にも魅力的だ。結局2名とも採用されたが、元官僚A氏は1年未満で離職、一方30代B氏は今では管理職として現場を引っ張る存在になっている。

終身雇用制度もだいぶ形骸化し、若手を中心に労働市場も流動化しつつあるが、それでも日本企業の多くは今でも新卒一括採用を堅持し続けている。とはいえ、企業側が新卒一括採用に限界を感じているのも事実で、中途採用による即戦力確保でその穴を補う形が広がりつつあるように見える。

そういう意味では、新卒で入った最初の会社はあくまでも基礎的なキャリアを磨く前段階であり、本人の素養や希望をある程度反映した本当の意味での『就職活動』は、20歳後半以降の中途採用だと言えるかもしれない。

今回のポイント
キャリア採用で最も重視されるのは「何ができるか」であり、そのために面接も配属部署の管理職が務める。
職歴のある自立した社会人が労働条件で一定の主張をするのは当然の権利であり、面接で聞きたいことは遠慮なく聞いていい。それで良い顔をしないようなダメ会社には入ってもロクなことはない。
ポテンシャルで判断され配属先も一方的に決められる新卒と違い、専門性と希望の反映されるキャリア採用こそ本当に意味での『就職活動』だと言える。20代のうちにキャリアデザインを済ませておき、“就活”できる人材になっておくことが望ましい。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

この記事はいかがでしたか? をクリック!(必須)

バックナンバー

3割近くが収入減!残業代にはもう頼るな|vol.58

3割近くが収入減!残業代にはもう頼るな 社会全体で残業自粛の取り組みが進む中、すでに中小企業の3割近い労働者が残業代削減による収入減に直面して...

「転職したい会社ランキング」は鵜呑みにするな|vol.57

「転職したい会社ランキング」は鵜呑みにするな 毎年あちこちのメディアで「転職したい会社ランキング」的なものが発表されるのが風物詩となっている...

いますぐメガバンクから転職すべきか|vol.56

いますぐメガバンクから転職すべきか 昨年メガバンク各行が立て続けに1万人規模のリストラを発表し、大きな話題となっている。リストラと言っても直接...