転職ノウハウ

ポスト終身雇用時代のキャリアデザイン

最近、日本を代表する大手企業各社による大規模な“リストラ”が相次ぎ、その現象は業種を問わず広がっている。好調な企業業績を背景に、2018年度の税収が60兆円を超え過去最高額に達するなか、この現象に違和感を覚える人も少なくないだろう。

実は現在、日本企業の人事戦略は一大転換期を迎えている。そのなかで個人のキャリア設計も抜本的な見直しを迫られているというのが筆者の考えだ。

大規模リストラは日本企業が“脱・終身雇用”に舵(かじ)を切り始めた証し

2000年前後にも、大手製造業などで大きなリストラが行われたが、今回のケースは当時と明らかに違う点がいくつかある。

まず、前回のリストラが工場の製造ライン中心だったのに対し、今回はさまざまな業種において本社を含むホワイトカラーが主な対象になっている点。そして早期退職募集や追い出し部屋といった“変化球”ではなく、成長部門への集中的な配置転換である点だ。

結論から言えば、日本企業が「もうこれ以上、働かない従業員の面倒を見る余裕はない」と論決したことが理由だと筆者は見ている。

終身雇用制度というのはもともと55歳定年を前提として設計されていた。それが国の年金財政ひっ迫のあおりを受け、年金支給年齢が60歳、65歳と引き上げられるにつれ、日本企業は定年後の継続雇用義務を負うことに。その結果、「出世レースも終わり、消化試合モードの従業員」を大量に抱え込む企業もでてきたのである。

その重さに耐えきれなくなった企業が、配置転換を通じて抜本的な体質改善に乗り出しているというのが実情だろう。

“ゼロからの再スタート”を求める配置転換

従来も配置転換はあるにはあったが、不採算部門に限定したり、業務的に近い事業部への異動であったりと、雇用維持にそれなりの配慮はあった。

だが今回の配置転換は全社の1割を超えるような規模のものが多く、異動先の事業も現在の仕事と全く関連がなく、文字通りゼロから再スタートするようなものばかりだ。

業務経験がない以上、当然ながら年功給も見直され、役割に応じた賃金水準に引き下げられることになる。割り増し退職金などの有無にもよるが、筆者の知る限り、配置転換対象となった人員のうち3割程度は自発的に離職するケースが多いようだ。

「心機一転、新人に戻ったつもりでゼロからリスタートしてくれるなら良し、納得せずに退職するならそれも良し」というのが企業側の本音であることがうかがえる。

水面下では更に雇用義務を70歳にまで引き延ばすことが検討されており、つい先日、70 歳までの就業機会確保を含む「経済財政運営と改革の基本方針 2019(いわゆる骨太方針2019)」が閣議決定された。「動くなら今しかない」と考える企業は少なくないだろうから、大規模な配置転換を通じた企業の体質改善は今後更に拡大するだろう。

崩壊していく年功序列制度、年収1,000万円の新卒も出現

従来、日本企業では若手時代は生産性以下の賃金を受け取り、40歳以降に昇進や昇給により生産性以上の報酬を受け取るという事実上の年功序列制度を採用してきた。

だが、大規模リストラが行われる今の時代、企業の戦略次第でいつでも過去の年功ははぎとられ、未経験の職場に放り込まれる可能性がある。言葉を換えれば、これからは日本企業も他国の企業同様、勤続年数にかかわらず生産性に応じた処遇を提供する制度に移行するということだ。昨年度から新卒に年収1,000万円以上の高給を提供する大手が増えつつあるが、これは同じ文脈で読み解ける現象だろう。

自身のキャリアは自身で決めよう

ポスト終身雇用・年功序列時代、個人のキャリアデザインは一変することになるだろう。 これまでは会社が与える業務をなんでもこなしてさえいれば(たとえこれといって転職市場で通用するスキルがなくとも)会社が年功序列で報いてくれた。だが終身雇用・年功序列が保証されない以上、会社の指示に全面的に服従するような働き方には、かなりのリスクがある。

自身の成果については将来の出世などではなく、ボーナスや昇給という目に見える形で要求し、マネジメントに納得がいかないなら上司と正面から交渉する。そんな姿勢がこれからのビジネスパーソンには求められるようになるだろう。

また、会社から配置転換を言い渡されたとき、そのプランを受け入れるか受け入れないかはともかく、その際に「自分の意に沿わなければいつでも転職できる人材」であるために、転職市場で売りになるスキルを自身で身に付けておくことは不可欠だろう。

「何から手を付けて良いか分からない」という人は、まずは人材紹介会社に登録するなどして、「自分が今持っている武器は何か、足りない武器は何なのか」を確認してみるべきだ。現状を知ることは、キャリアデザインの第一歩なのである。

今回のポイント

大企業の一部が年功序列を否定する動きを見せているなか、従来と同じ働き方をすることはかなりのリスクがある。
年功がいつでも否定される可能性がある以上、無条件で会社に従うべきではない。成果やキャリアについて、上司と正面から交渉する姿勢が求められる。
意に沿わない配置転換を打診されたら、いつでも転職できるだけの人材となっておくことが、今後すべてのビジネスパーソンに要求されるだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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