転職ノウハウ

令和時代の転勤事情 「転勤を拒否する若者たち」が企業を変える

近年、転勤に抵抗を覚える若者が増え、企業の側も、転勤のない勤務地限定コースを用意したり、原則として同意のない転勤は命じないという方針を立てたり、さまざまな対策を採り始めている。これをもって「若者が甘やかされた結果にすぎない」と批判的な声もあるが、筆者はまったく違う見解を持っている。

企業、ビジネスパーソンの双方にとって興味深い論点だと思うので、簡単にまとめておきたい。

なぜ若手は転勤を敬遠するようになったのか

実は、筆者自身も若手時代は転勤がイヤでイヤでたまらなかった。「終身雇用を維持するためには、余剰人員を別の事業所に回すことで雇用調整するしかない」という人事の理屈を頭ではわかっていても、会社都合で縁もゆかりもない土地に引っ越すのは願い下げだったし、周囲の同期もほとんどが同じ考えだったと思う。

それでも会社に「No」と言わずに従ったのは、我慢すれば将来的に出世させてもらえるという淡い期待があったためだ。

で、どうなったか。出世どころか、過半数が役職のないヒラで飼殺しにされ、会社によっては早期退職のターゲットにされた人間もいる。若いころに我慢したことを後悔しているという40代以上は少なくないはずだ。

さて、そういう具合に既に日本型雇用の白黒がついてしまっている以上、いまさら新人に「会社と自身の将来のために我慢して転勤したまえ」と言っても納得する人は少ないだろう。一言で言えば、彼ら若手は最初から会社に期待などしていないということだ。

そういえば昨年、日本経済団体連合会(経団連)による就活ルールの廃止が話題となったが、あの背景には、優秀な学生が新卒一括採用を敬遠し、経団連傘下の大手企業から外資系企業やベンチャー企業に流れるようになったことがある。

転勤を拒否する草食系若手も、外資系企業やベンチャー企業に流れる肉食系若手も、日本型雇用に「No」を突き付けているという点では同じなのだ。

同意のない転勤はさせない工夫を

では、企業としてどのように対処すべきだろうか。「自分たちもやったんだからさ」式のマネジメントは完全に逆効果なのは言うまでもない。

「じゃあ先輩たちのように出世させてもらえる保証はあるんですか。と言うか、先輩、ホントは後悔してるんじゃないですか?」と反論されたら返す言葉がないだろう。

そもそも本人が拒否している以上、やはり同意のない転勤はさせない工夫が必要だろう。無理やり命じてもあっさり転職されてしまう可能性が高い。

それで会社が回るのかという疑問については、筆者は2つの点で楽観視している。

第一に、転勤は人員調整の必要性にくわえ、社内を幅広く経験させることでつぶしのきくゼネラリストを養成する狙いがあったが、近年ゼネラリストへのニーズは減少している。惰性で続けられている転勤を見直すことで、同意のない転勤を抑制することは可能なはずだ。

そして第二に、転勤を拒否する人間がいる一方で、組織内には必ず「No」と言えない人間(主に40歳以上の中高年)もいるという点だ。本当に人員調整で転勤が必要なら、そうした人材を動かせば済む話だろう。

転勤に限らず、会社に「No」と言える人材と言えない人材の処遇格差は、今後ますます拡大していくことは間違いない。現在流行りの45歳以降の早期退職募集でも、主にターゲットとされるのは後者である。

令和の時代、ビジネスパーソンが目指すべきは「会社に忠誠を尽くす人材」ではなく「会社にNoと言える人材」であることは言うまでもない。

今回のポイント

新人の転勤に対する拒否反応自体は昔から存在したが、今の若手にはそれを我慢して受け入れるインセンティブがない。
だから「先輩たちもやってきたんだから」という説得は逆効果である。原則として本人の同意のない転勤は控えるよう、会社側が努力すべきだ。
とはいえ転勤制度自体は当面存続するはずなので、ビジネスパーソンは意に沿わない転勤については「No」と言える人材を目指すべきだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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