転職ノウハウ

裁量労働とうまく付き合う方法

毎年発表される大学就職企業人気ランキング※を見てみると、上位には大手有名企業が名を連ねていて、日本の学生たちが依然として安定性を求め大手志向であることがうかがえる。

一方、日本以外の国ではスタートアップ企業を選択する若者も少なくない。これは「いかに裁量権(自分の判断で問題を処理する権利)を持って仕事をし、成果を実感することができるのか」に重きを置いているからであろう。

しかし、日本型組織では裁量労働が浸透しておらず、なかなか個人で裁量権を持つことを実感する機会はない。これには日本以外の国には見られない、日本独特の構造的な理由がある。

今回は、これから個人のキャリアを考えていくうえでも重要となってくるであろう「裁量労働」をテーマにまとめておこう。

※(マイナビ2020「就職企業人気ランキング」より)

そもそも“裁量権”がないのが日本式

日本以外の国では、雇用契約を結ぶ際に職務記述書を交わし、具体的な業務内容と報酬を取り決めるのが一般的だ。

一方で日本の場合、“総合職”あるいは“一般職”といったおおまかなコースは分かれているものの、何の仕事に対していくら払うかといった取り決めはなく「正社員として与えられた仕事は何でもこなす」という暗黙のルールに基づいて働くことになる。

裁量権というものは自身の業務範囲が明確に線引きされて初めて生まれるものだ。取りあえずみんなで一緒に作業し、手の空いたものが次々に仕事を振られる状態では個人が裁量を発揮する余地はほとんどない。

これが、日本型組織と裁量労働の相性が悪い構造的な原因である。

「早く仕事を終えても次から次に仕事が降ってくる」という一種の被害意識は、あながち根拠のないものとも言い切れないのだ。

個人が“裁量労働”とうまく付き合う方法

とは言え、日本以外の国では裁量権を持ち、働くことが当たり前となっており、今後その波が日本にやってくるであろうことは想像に難くない。今からその波に乗るべく、準備をしておいて損はないと言える。

まず、現状の枠組みの中で個人が裁量をうまく発揮するコツは、目標管理制度等を通じてあらかじめ業務範囲を明確化しておくことが基本となる。目標管理を職務記述書の代わりに活用するわけだ。

実際に実現している会社は少ないが、筆者は個人の目標を部署内でオープンにするのがとても有効だと考えている。同僚から見ても業務範囲が明確なら、自分の業務が終わった後に自分の範疇(はんちゅう)外の仕事が振られることもなくなるためだ。

その上で、管理職が本人への裁量権の委譲を認めることがポイントとなる。ミッションを明確にした上で、進め方は各人の自由に任せるということだ。「仕事のできる部下に遅い人間の仕事をどんどん割り振ってやる」というのは昭和のマネジメントなので、この際きれいさっぱり忘れるべきだろう。

そうした取り組みが会社全体でしっかりと行われていれば、日本企業であっても比較的順調に裁量労働が機能しているというのが筆者の意見だ。

今回のポイント

そもそも担当業務範囲が曖昧な日本企業では、裁量労働は浸透しづらいものの、今後を見据えたうえで裁量労働を実現させていくべきである。
裁量労働を浸透させるには、業務範囲の明確化と裁量権の委譲が基本であり、目標管理制度等の積極的な活用が望ましい。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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