転職ノウハウ

企業も労働者も見逃せない“副業”のメリット

人手不足が深刻化する中、副業に熱い視線が集まっている。筆者の知る範囲でも「週1日でもいいから働いてくれる人が欲しい」という企業は少なくないし、労働者にとっても、ベアなどに期待するより副業の方がはるかに現実的だろう。

政府も昨年、副業に関するガイドライン(※1)を提示し、この動きを後押ししようとしている。遠からず、副業は転職と並んで収入アップの主な選択肢の1つとなるだろう。

※1(厚生労働省 2018年1月「副業・兼業の促進に関するガイドライン」より)

副業がOKな会社、NGな会社

とはいえ、全ての会社で副業がすんなりと認められるわけではない。経団連が会員企業を対象に行った調査(※2)によると、現在副業を認めていない企業は78.1%に上り、「今後も認めるつもりはない」とする企業は43.5%にも達する。

要するに大手企業では現状、副業はほとんど認められておらず、先行きも不透明だということになる。

一方で、IT系のベンチャー企業や中小企業の一部では、政府がガイドラインを出す前から副業は浸透しており、複数の名刺を使い分けるビジネスパーソンも特に珍しい存在ではない。

労働者からすれば、自身の専門スキルを複数の会社に提供した方が、収入という点でも成長という点でもメリットは大きい。また会社からしても、限られたリソースで働き手を有効活用できるわけだから、やはりメリットは無視できない。

当面、副業のメリットを享受する企業群と、就業規則の副業規定を通じて副業を排除しようとする企業群の併存は続くだろう。

※2(一般社団法人 日本経済団体連合会 2019年1月「2018年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」より)

大企業もいずれ副業のメリットを無視できなくなる

ただ、近い将来、大企業も副業のメリットに気づき、副業解禁に舵を切ることになると筆者は見ている。

今、日本の大手企業がもっとも頭を抱えている人事的な課題は、40代以降の正社員のモチベーション喪失問題だ。一般的な日本企業では30代後半~40代前半で幹部候補選抜を終えるため、そこで選ばれなかった過半数の人材にとっては、それ以降の会社生活は一種の“消化試合”と化すことになる。

90年代のように定年が55歳であったなら、そういう制度でも問題は少なかったのかもしれない。だが現在、定年は早くても60歳であり、さらに高年齢者雇用安定法の改正により、希望者全員が65歳まで継続雇用されることが可能となった。

こうなると“消化試合”が20年以上続くことになり、会社としてもその扱いに困り果てているというのが実際である。“上がり目”がなくなれば手を抜いて楽をしようとする人間もいるだろう。しかし、このご時世、80年代のように「定年直前まで昇給させる」などということもできない。

ではどうするか?副業を認めることで組織の外に“上がり目”を見い出させ、自分でモチベーションを再起動してもらうしかない。モチベーションというのは面白いもので、副業で前向きなモチベーションを生み出した人間は、本業に対しても前向きに取り組めるようになるものだ。

世の中には「副業に入れ込むあまり本業がおろそかになるのでは?」と心配している経営者が多いように見える。だが、実際に副業を手掛けている人には「副業の時間を確保するため、本業をテキパキと効率的にこなす」タイプが多い。

逆に本業1本しかやっていないにもかかわらず、「何も新しいことに挑戦しようとせず、向上心もなくだらだらと働く」タイプが人の出入りの少ない大組織には多いように筆者には見える。部下としてどちらが望ましいかと聞かれれば、ほとんどの経営者は前者を挙げるのではないだろうか。

転職よりハードルの低い副業

転職経験がなく、40歳を過ぎてキャリアの天井を感じているという人には、転職もいいが、まずは副業を視野に入れてみることをおすすめしたい。ノーリスクで着実に収入増が見込め、在籍したまま外の空気に触れることもできる。そこで手応えを感じたなら転職を視野に入れるのもいいだろう。

実は、就業時間外に副業を行うことを禁じる法律は存在しない。だから、就業規則で副業を禁じている会社であっても、上司や人事部に事前に相談すれば認められる余地は十分にある。(※3)

外の世界で挑戦し、そこで得た刺激を本業に生かしたい旨を伝えれば、少なくとも中高年のモチベーション喪失問題に直面している人事部門の人間なら、前向きに検討してくれるに違いない。

※3(会社に隠れて副業を行うと、住民税の金額で発覚する恐れがあるので個人的にはおすすめしない。)

今回のポイント

経団連の調査では、副業は約8割の企業で認められていない。一方、ベンチャー企業や中小企業の一部ではすでに副業がある程度浸透している。
中高年のモチベーション喪失に悩む大企業も、やがて副業によるメリットに気づき、解禁に向けて動き出すはずだ。
副業は転職よりハードルが低い。キャリアの天井を感じたなら、まずは副業から手を付けるのもおすすめだ。その場合は事前に会社と相談するのがいいだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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