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中途採用では学歴や職歴は気にするな

筆者が以前、都内の転職フェアで基調講演を行った時の話だ。終身雇用型キャリアパスの限界と、35歳以降のキャリアの行きづまりを避けるためのキャリアデザインの重要性について一通り語った後に、一人の参加者からこんな質問をもらった。

「私は3流の大学出身で、今在籍している会社も無名企業です。自分のような人間にはあまり縁のない話なのかもしれませんね」

なるほど、人事以外の人間にとってはそういう見方もあるのかと少々驚いた記憶がある。結論から言えばまったく逆で、少なくとも中途採用では学歴や社名に過剰にこだわる必要はない。むしろ、無名企業で場数を踏んだ“がっついたビジネスパーソン”こそ、有名企業の人事に刺さるものがあるというのが筆者の意見だ。

新卒採用の時に学歴が非常に重要な指標となっているのは事実だ。“学歴フィルター”なんて言葉があるように、どこの企業にも独自の学歴フィルターがあって、学生の大まかな選別をしている。

企業によって全然違うので一概には言えないが、採用人数が100人以上の大手企業なら、だいたいMARCH(M=明治、A=青山学院、R=立教、C=中央、H=法政)以上が採用対象だと考えていい。

こういうフィルターを使う理由は、単純に応募者数が多すぎて全員を面接できないこと、新卒一括採用は基本的にポテンシャル採用なので、偏差値によるセレクションがそれなりに意味を持つことなどが挙げられる。
(最近は少子化に伴う大学ブランドの質低下で企業の学歴信仰も相当揺らいできているが、本稿では省く)

だが、中途採用においては「実際にビジネスの現場で培ったスキル」というはるかに現実的、実践的な指標があるので、多くの企業ではそうした要素をベースに、じっくりアナログ的に判断されることになる。

もちろん学歴もないよりはあった方がいいし、前職の会社名も有名に越したことはないけれども、一番重視されるのは「これまで何をしてきたか、そしてこれから何ができるか」である。新卒時に門前払いされた大企業だからといって、気後れする必要なんてまったくない。

と言われても、まだ自信がわいてこないという人もいるだろうから、もう一つ重要な視点を挙げておこう。

能力よりもモチベーション

腕の良い人事担当者は、人物を見る場合、モチベーションがとても重要なことを理解している。インセンティブ、理念への共感、情熱、いろいろな言葉で表現されるだろうが、要するに「どれくらい前向きにガツガツと仕事ができるか」ということだ。

どんなに優秀な能力や経験があっても、モチベーションの低い人間はそれ以上成長しないし、大きな貢献も望めない。何かで失敗したことをいつまでも引きずっている人間が、なかなか前向きになれない様子をイメージしてもらえば分かりやすいだろう。

逆に多少バカで寄り道しているような人間でも、モチベーションが高ければ、多少のラグはあっても新たな環境に順応できるし、後々大化けする可能性もある。こちらはコツコツ努力できるタイプと言えば分かりやすいだろうか。経験のある人事なら、必ずそうした視点で人物を見るものだ。

筆者なら、目をぎらつかせつつ、無名企業から自社の門をたたきに来た人間を、それだけで魅力的だと感じる。話してみて、高い処遇、大きな仕事に魅力を感じている様子ならなおさらいい人材だと思う。彼には高いモチベーションがあるためだ。「もっとお金が欲しい」という人ほど信用できる人間はいないというのが筆者の意見だ。

むしろ自社より格上の企業や、高い処遇を保障されているはずの一流企業から応募してきた人材については、彼が本当に前向きなモチベーションを持っているかどうか、かなり慎重に判断することになるだろう。

「仕事はお金じゃない」という人間ほど信用ならない人間はいないというのもまた、筆者の意見である。要するに“モチベーション”という点では、非エリートの方がエリートより有利な立ち位置に立っているわけだ。

エリートであり続けるには努力が必要

逆の視点から見れば、今回の話は、一流の組織に席を持っている一流大卒の人間にとっても貴重な教訓となるはずだ。

本当に勤続年数にふさわしい職歴を積めているか。貰っている給料分のスキルを持っているか。そして、それらは今の会社以外でも通用するものなのか。常にそうした意識を持って業務に取り組んでいなければ、新卒時に一流であったとしても、転職市場で一流として通用するという保証はないのだ。

そうした人材が最も注意すべきなのは、あまり一貫性のないジョブローテーションを経ることで、勤続年数のわりに薄味なキャリアしか積めないケースだろう。それ自体、一概に悪だとは言い切れない。

その会社で定年まで働くつもりなら、複数の部門を経験してつぶしのきくゼネラリストになっておくことは悪い話ではないし、そのために畑違いの職種にローテーションされるのも当然だろう。

特に、部長級以上への昇格を目指すのであれば、複数部門を経験して俯瞰的な社内視野を持っておくのはむしろプラスだとも言える。でも、いずれ中途採用市場に打って出るつもりなら、ジョブローテーションはどちらかと言えばマイナスに作用するケースが多いように思う。

最後に、実際のケースを一つだけ紹介しておこう。ある企業のシステムエンジニア職の募集に対し、二人の求職者が応募してきた際の話だ。

一人は都内の一流大を出て誰もが知っている大手企業に就職したA氏。もう一人は専門学校を卒業して新興システム会社で働いてきたB氏で、年齢はともに30歳。履歴だけを聞けばA氏有利に聞こえるかもしれないが、実際に面接の結果、採用されたのはB氏だった。

理由は単純に、B氏の方が、募集企業の求めている経験が豊富で、スキルもあり、なおかつ旺盛なモチベーションがあると判断されたためだ。A氏についてはもちろんポテンシャルは優秀なのだろうが、営業系→社内システム部門と途中で大きくジョブローテーションしていたことがマイナスに評価されてしまった。

ポテンシャルがあってもほったらかしにしてしまったり、滅私奉公のために浪費したりしてしまえば、中途採用で必ずしも勝ち組にはなれないという好例だろう。

今回のポイント
新卒採用ではポテンシャル=学歴が重視されるが、中途採用では職歴やスキルといった、より実践的な要素が判断材料とされる。
くわえて、多くの採用担当は中途採用においてモチベーションを非常に重視する。この点でも無名企業からの応募は有利と言える。
社内の複数の部門を経験させてつぶしのきくゼネラリストを養成するためのジョブローテーションは、ともすれば中途採用においては不利になりやすい。一社において上を目指すのか、それとも労働市場における価値を重視するのかにより、取りうる選択肢は変わってくる。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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