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退職手続きの作法

転職はすっかり一般的な選択肢として定着した印象があるが、その前段プロセスである"退職"に関しては正面から論じられることは案外少ないように思う。実は、退職の進め方というのはキャリアという観点からも決して片手間にしてはいけない性質のものだ。というわけで、今回は意外な死角である退職手続きについてまとめておこう。

退職時にはセルフマネジメントの有無が決定的に出る

まず大前提として、期間の定めのない雇用契約、いわゆる一般的なサラリーマンであれば、2週間前に退職届を出せばいつでも退職は可能というのが法律で定められたルールだ。多くの企業では就業規則で「退職届の提出は1ヵ月前まで」といった具合により余裕を持たせてあるはずだが、就業規則をたてに退職希望者を縛り付けることはできない。

以上の点を踏まえた上で、退職希望者は退職時期や引継ぎ、有給休暇の消化について会社と交渉することになる。

まず退職時期だが、少なくとも就業規則に書かれている期間は余裕をもって設定すべきだろう。というのも、おそらく就業規則に明記されている期間というのは、会社が後任を確保し、引継ぎを遅滞なく行うための最低限必要な期間だと考えられるからだ。

その就業規則に納得して入社したにもかかわらず、いざ退職する段になって引継ぎすら十分に行えなかったとなれば、それは本人のセルフマネジメントに深刻な難があったという印象を拭えない。

有給の消化も同じだ。よく「ほとんどの有給休暇を消化できないまま消滅させている」という残業自慢ならぬ"有給消滅自慢"を耳にするが、はっきりいって「自分が怠惰で全然セルフマネジメントできていません」と宣言しているようなものだろう。

ビジネスパーソンなら裁量をもって業務に臨み、周囲とも調整しつつ、せめて8割程度の消化は目指したい。各々の事情にもよるだろうが、セルフマネジメント不足が有給消化できていなかった原因の一つとなっているならば、退職時にはまず十分な引継ぎ期間を確保しつつ、それに障らない範囲で残った有給を使用すべきだろう。

それでも納得できないという人は、中途採用する側の身になって想像してみてほしい。

「2週間前に退職願を出して、しかも1週間は有給消化で出社せずバタバタのまま放置して来ました」という人と、「2ヵ月前に退職願を出したうえで、後任の確保・引継ぎまで完璧に行ってまいりました。有給休暇は普段から業務に支障のない範囲で適切に消化しておりますので別段問題はございません」 という人の、

果たしてどちらに頼りがいがあると感じるだろうか。

退職時の手続きの進め方には本人のセルフマネジメント力の有無が如実にあらわれる。また、前職でのドタバタは後々になって必ず転職先にも伝わるものだ。できるだけ真摯(しんし)に、立つ鳥後を濁さずの精神で転職することを理想とするのが筆者のスタンスだ。

退職を申し出た後で翻意はアリか

最近よくされる質問に「転職活動で内定をもらい、退職届を提出したものの、懸命に慰留され迷っている。退職を翻意しても大丈夫か」というものがある。人手不足が深刻化する中、企業は以前よりもはるかに人材流出に神経質になっているため、退職届を提出した従業員に対する慰留活動が強化されているのだろう。

結論から言えば、90年代ならいざ知らず、一度出した退職届を引っ込めても人事的な影響はほとんどないだろう。むしろ立派な戦力として評価されているのだから、その機会に勤務地や希望部署などで自身の希望を伝え、交渉すべきだろう。無論、内定先には速やかに辞退の旨を伝えるべきだ。

すでに日本においても労働市場は流動化し始めている。これから市場の中でより高い処遇を勝ち取れるのは、会社に言いたいことを言い、必要な処遇を引き出せるビジネスパーソンだ。退職手続きは良い交渉の場と言っていいだろう。

今回のポイント
民法第627条では2週間前に退職届を出せばよいということになっているが、実際は少なくとも就業規則に明記された期間は確保しつつ、引継ぎに十分な時間をとるべきだろう。
引継ぎも有給消化もセルフマネジメントでカバーできる問題であり、一流のビジネスパーソンならうまくできて当たり前である。
退職を強く慰留されたなら、思い切って希望部署や処遇といった面で交渉してみるのも悪くない。終身雇用制度が形がい化した今、会社と交渉できる人間とできない人間の格差は今後大きく拡大するだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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