転職ノウハウ

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転職のきっかけは正直に伝えるべきか

人はなぜ転職するのだろうか。理由はそれぞれだろうが、終身雇用を前提とする昭和的価値観が強く残っている間は、転職というのは「本人の責によらない理由でやむを得ず行うか、さらなる刺激と成長を求めて前向きに行うのが良い転職」と考える人事が多かった。

具体的に言うと「仕事が合わない」とか「人間関係がうまくいかないから」という動機は低評価で、「自分のいる事業部が統廃合されやむなく」や「挑戦すべき課題をやり尽くしたから」というのが高評価だった。今でも「前向きな転職動機はOK、ネガティブな転職動機はNG」的なことを言う採用担当もたまにいる。

とはいえ、終身雇用色が薄れるにつれ、そのあたりの温度感も大きく変わりつつあるように思う。というわけで、今回は転職のきっかけについてまとめておこう。

中途採用面接は腹を割って話し合う場

結論から言えば、転職の動機やきっかけは人それぞれ、千差万別であり、どんどん中途採用面接で口に出してしまって構わない、というのが筆者のスタンスだ。理由は2点ある。

まず年々深刻化する働き手不足により、大企業であってももはや終身雇用的価値観にこだわる余裕がなくなった点が大きい。

例えば90年代なら一度離職した従業員を再び入社させることなどありえなかったが、現在は離職した人材に元同僚や元上司からコンタクトをとらせ出戻り転職を促す会社まである。

同様に「仕事が合わなかったから」「家庭の事情で転勤できなかったから」という個人都合に対しても、現在の日本企業は恐らく戦後最大の寛容さをもって話を聞いてくれるはずだ。

実際に筆者の経験でも「すべてをやり尽くし、さらなる刺激と成長を求めてまいりました」的な人材など1%もいないので、贅沢なんて言ってはいられないのだ。

2点目の理由は、そもそも“転職の動機”なるものが立場によってどうとでも捉えられる曖昧なものであり、人材評価の基準としては、たいしてアテにならないためだ。

例えば「より大きな仕事に携わる機会を求めたのが転職のきっかけです」という求職者が10人いたとして、前職の上司にヒアリングして「その通り!彼はホントに凄い奴だった!」という上司は1~2人程度だろう。それくらい本人が思いつく動機と周囲の見なす動機は別物だということだ。

そもそも、入社に際して立派な動機や理念を提示せねばならないのは新卒採用であり、それは新卒採用がポテンシャル採用だからだ。既に社会人としてのスキルや職歴がある中途採用においては動機など盛る必要はなく、思うところを正直に伝えた方がよい。

中途採用面接というのは突き詰めれば交渉の場であり、求職者は「これまで何をやってきたか」「これから何ができるか」を、採用する側は「何を期待しているのか」「どういう処遇が用意できるか」を、互いに腹を割って話し合うべきだろう。

押して忍ぶのが美徳という時代は終わった

以前から複数の調査で明らかになっていることだが、実は日本人の仕事に対する満足度や愛社精神は、世界的にみると最低レベルの水準にある。例えば米ギャラップ社の調査によれば「熱意のある社員」の割合は139ヵ国中132位(※)だ。

理由は簡単で、日本では職種ではなくその会社の正社員という身分に就職し、与えられる仕事を何でもこなすため業務の中身にはなかなかコミットできず、仕事が合わなくても人間関係をストレスに感じても(終身雇用の枠組みの中では)自分を押し殺して忍ぶしかないからだ。

80年代のように定年が55歳の時代なら、そういう生き方も意味があったかもしれない。でも、今や再雇用も含めれば実質的な定年は65歳。

しかも政府内ではさらに年金支給開始年齢の引き上げが検討されているから、70歳まで一線で働かねばならない時代が来るかもしれない。そういう人生100年時代に、ひたすら自分を押し殺す生き方でいいのだろうか。

日本人の仕事に対する満足度を向上させる方法はとてもシンプルだ。とりあえず、今の仕事に満足していない人は誰でも、在籍したまま転職活動をしてみることだ。

そして、応募した企業との面接で何でも言いたいことを言えばいい。よほどむちゃくちゃなリクエストでもないかぎり、この人手不足のご時世、10社程度受ければそのリクエストに近いものを提示してくれる企業はきっと見つかるに違いない。

※(2017 Employee Engagement)

今回のポイント
ポテンシャルを測る新卒採用と違い、中途採用はスキルと職歴を評価される場だ。変に盛らずに腹を割って交渉するといい。
深刻な人手不足により、現在の日本企業は昔に比べて個人の都合に寛容になっている。この傾向は当面変わらないだろう。
日本人の仕事に対する満足度が低いのは、終身雇用の枠組みの中で我慢しているためだ。在籍したまま転職活動し、言いたいことを言って内定がもらえれば、その満足度は大きく向上するに違いない。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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