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ハイクラス求人との付き合い方

ネット広告などで、しばしば"ハイクラス求人"なるものを目にする。ほかにもエグゼクティブ求人やらグローバル転職やらといったネーミングで広告を打っていることもあるが、基本的にはどれも年収800万円オーバー求人のことを指しているようだ。きっと誰でも一度は目にしたことがあるに違いない。

とはいえ、その中身についてはほとんどの人が知らないと思われるので、今回は簡単にハイクラス求人について解説しておこう。読んでみて自分が該当するとわかった人はチャレンジしてみるもよし、これからじっくりと目指すべき目標の1つとするもよしである。

ハイクラス求人の特徴

当たり前の話だが、ハイクラス求人のほとんどが管理職であり、管理職としての一定の職歴、実績が必須とされる。年収はピンキリで、ハイクラスと銘打ちつつも実際は500万円であったり、金融、コンサルの中には2,000万円を超えたりするものもある。

紹介会社によって異なるが、一般的には年収より職種内容でハイクラスと区切っているケースが多いように見える。だから「ハイクラスを名乗れるほどは貰ってないので自分は関係ない」と早合点してしまうのは少々もったいない。

一般の中途採用とのわかりやすい違いは、対象者の年齢だろう。一般の中途採用は35歳以下が中心だが、ハイクラスに限ってはむしろ40代50代の方が多い。管理職経験者が対象なので当然だろう。

以前「転職35歳の壁を突破する方法」でも述べたように、35歳の壁というのは非管理職の転職市場に存在するものであり、逆に言うとマネジメントの経験者なら50代でもいくらでもチャンスはあるということになる。

具体的な職種内容だが、営業から管理部門責任者まで実に幅広く、ずばり経営者というものまである。先日、日本マクドナルド前CEOの原田泳幸氏がベネッセ社長に就任するというニュースが話題となったが、好不況の波に関わらず常に一定のニーズのある市場と言える。

というと「実際に転職サイトを見に行ったけれども、思ったほど求人がなかった」という人もいるかもしれない。実は、いわゆるハイクラス求人の多くは非公開で、人材紹介会社に登録して初めて転職コンサルタント経由で紹介されることが多いのだ(もしくはヘッドハンターを介した一本釣りも)。それだけ重要なポジションであり、あまり外部に情報を出したくないというのが採用側の本音というわけだ。

ちなみに、必要とされるスキルだが、筆者の感覚で言うと、一部門だけ極めたプロフェッショナルよりは、営業と管理部門、技術系とマーケティングなど、複数の部門を経験し、より幅広い視点から事業全体にフィードバックできる人材の方が需要が高いように思う。もはや従業員というよりも経営サイドに近い立場なので、経営全体を踏まえた貢献が求められるためだろう。

今でも日本の大手企業の中には、畑違いの職種にジョブローテーションさせ、社内でつぶしの効く人材を育てる慣習が残っている企業がある。キャリアに水を差す形になるため今ひとつ評判はよろしくないのだが、ハイクラス求人を目指すことを考えるなら、筆者は必ずしもマイナスだとは思わない。ある程度バックボーンとなる職歴を磨いた後か、またそのローテーションによりどれほどスキルに深みが出るかといった点で、個別に判断するべきだろう。

また、職歴以上に重視されるのが"人脈"である。営業系なら、いきなりそれなりの規模の顧客リスト(もちろん名簿を持ち出せというわけではなく、頭の中の記憶のことだ)付きで事業を引っ張れる人材を採るという意味合いもあるし、場合によっては部下の何人かもセットで採用するケースもある。

非営業系の管理職であっても、業界に幅広いコネクションを持っていて同業他社や取引先に顔が利くようなタイプが、特に国内にノウハウの薄い外資系からは評価される。いずれも良好な人脈を築いていればこその話だ。

ハイクラス求人にはリスクもある

とはいえ、ハイクラス求人はいいことばかりというわけではない。実はハイクラス求人とそれ以外の求人には決定的な違いがある。そういった求人の多くは外資系企業や新興企業から出されており、いわゆる終身雇用型の大企業からのものは非常に少ないという点だ。つまり、期待に沿わないパフォーマンスを続けた場合、賃下げや降格、場合によっては解雇される可能性もそれなりにあるということである。

こうなる理由は明らかで、終身雇用型組織とそれ以外の組織の報酬システムの違いが根っこにある。後者の場合、ポストは役割の一種であり、必要であれば外部からでも採用するし、役割に見合わない人材であれば解雇もされうる。(※)

一方、年功序列型組織の場合、ポストは20~30代の年功に対するご褒美という意味合いが強く、そうした貴重なポストをわざわざ用意してまで外部出身者を迎え入れようというインセンティブ自体が薄い。まったくないとは言わないが、よほど強いニーズのある例外的なケースだけだ。

まとめると、いろいろな企業が幅広く募集している20、30代の一般的求人に対し、ハイクラス求人というのは非終身雇用型組織における役割採用というのが実態であり、特に大企業のような終身雇用型組織から応募する場合は、まったくカルチャーもリスクも異なる世界への一方通行となることは覚悟しておくべきだろう。

筆者も、しばしば大企業や官公庁の40歳前後の人間から、そうしたポジションへの転職の相談を受けることがある。中には転職する気などなかったが、ヘッドハンターから今の年収の2倍近い額を提示されて半分その気になったという人間もいる。でも、それは逆に言うなら、2倍提示せざるをえないほどのリスクがありますよということでもある。

重要なのは、そういった事情をきちんと把握したうえで"自身で"選択することだろう。すべて踏まえたうえで、自身で下した選択であれば、どんな結果になっても人は後悔しないものであり、逆に言えばそれこそが"レールのない世界"を前に進むうえで最強のエンジンだというのが筆者のアドバイスだ。

(※)業務内容やポストを明確にしたうえでの採用をした場合、その職務が遂行できないことが明らかな時は、解雇が認められる可能性が高い傾向がある。

今回のポイント
ハイクラス求人の多くはマネジメントスキルを重視しているため、むしろ40代50代が主役である
ハイクラス求人とは、管理職やマネジメントスキルを要する職種であるケースが多く、必ずしも今の年収で引け目を感じる必要はない。
実際にはハイクラス求人の多くが新興企業や外資系企業であり、いわゆる終身雇用型大企業のポストとは意味合いが大きく異なる。一定のリスクに加え、後者から移る場合は片道切符だということを理解すべきだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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