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給料2倍のオファーを提示されたら何をチェックすべきか

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)といった新技術の開発競争が過熱する中、 電機や自動車、ITなどの業種の垣根を越えた人材獲得競争が勃発している。そんな中、「現在の給料の2倍を超えるような高額のオファー」を受けるビジネスパーソンも珍しくない。

引き抜きを通じて個人はより良い処遇を手にできるし、社会は人材の適材適所を通じて発展を享受できる。 良いことずくめの話ではあるのだが、そもそもなぜ2倍を超えるような給料ギャップが生じているのだろうか。 キャリアデザインを考える上で、賃金の問題は避けては通れないテーマなのでまとめておこう。

「2倍のオファー」が常におトクだとはかぎらない理由

実は賃金制度には大きく分けて2つのタイプがある。まずは、日本企業で一般的な職能給(年功給とも)で、 初任給からスタートし勤続年数に応じて少しずつ積みあがっていくスタイルだ。 「後になればなるほど高くなり、よほどのことがない限りは下がることはない」というのが特徴である。 定年までの長い期間で帳尻が合うように組まれているため、必ずしも現在の仕事に見合った賃金が支払われているとは言えないシステムだ。

余談だが、よく週刊誌などで「日本企業の生涯賃金ランキング」みたいな特集が組まれているが、 あれは今現在在籍している20代から50代までのすべての年代の社員の賃金から算出しており、 今の20代が本当に30年後にそれだけもらえる保証などなく、結構いい加減なものなので過信はしない方がいいだろう。

さて、もう一つの賃金制度は、職務給(役割給とも)と呼ばれ、実際に担当する仕事内容で賃金が決まるシステムだ。 「将来出世するだろうから」なんて曖昧な約束ではなく、リアルタイムで何が求められ、いくら払うのかを具体的に決める明朗会計である。

いわゆる「2倍超のオファーが突然くる」背景には、前者の職能給型組織で働く若手~中堅に対し、 後者の職務給型組織からのオファーであるケースがほとんどだ。後者なら賃金が下がることもあるし、 求められる成果が発揮できなければ解雇されるリスクもある。

そう考えると単純に2倍の方がおトクだとも言い切れないのは明らかだろう。 じっくり腰を落ち着けた上でキャリアを形成していくのか、それとも貪欲に成果を追求し続けることで短いスパンで報酬を得るのか。 自身のキャリアデザインによって判断すべきだ。

ただ一般論としては、そうしたオファーを受けるに際して、自身が本当に要求されている役割が果たせるかどうかは 事前によくリサーチした方がいいだろう。というのも、通常の日本企業と違い、 外資などの職務給型企業は「とりあえず採ってみてダメならすぐに切ればいい」くらいの軽いスタンスでいることがあるからだ。

「挑戦してみたけど、前の会社以外ではスキルが通用しませんでした」と言っても、すんなり元の会社には戻れないのは言うまでもない。

日本企業の強みは何か

では日本企業の終身雇用で働くメリットとは何だろうか。90年代なら「50歳を過ぎれば誰でも部長くらいには出世して、 給料も高止まりしているから余裕をもって人生設計できる」と言っておけば済む話だった。 だが、大卒総合職もすでに50代で過半数が役職無しという調査結果もある。 上述したような終身雇用のメリットは必ずしも万人が実感できるものではなくなっているのだ。

そんな中でメリットをあえて挙げるとすれば、人材育成に重点を置き、時間とコストをかけてくれる点だろう。 新卒がいい例だが、未経験の人材に成長できるチャンスを与えてくれることが日本型組織の最大の強みだと筆者は考えている。

だからこそ、個人は日本企業で働く際にこれまで以上に自身のキャリアデザインをしっかりと行い、そのメリットを最大限に活かすべきだ。 そして経営側は個人がキャリアをデザインできるように社内公募など一定の選択権を与え、 出世以外で長く勤めることのメリットを慰留の際にしっかり提示することが重要だ。

「うちにいれば雇用が保証されるから安心だぞ」といった後ろ向きな引き留めは、 かえって進取の気性に富んだ優秀人材の背を押すことにつながりかねない。あくまでも前向きに長期雇用のメリットを説明すべきだろう。

今回のポイント
終身雇用と職務給の組織では給料の基準が異なるため、前者の若手や中堅社員にしばしば高額オファーが舞い込むことになる。
ただし雇用期間や賃下げ、解雇などのリスクを考慮すれば、必ずしもおトクだとは言えない。自身のキャリアデザインに沿って判断すべきだ。
終身雇用は未経験の人材にチャンスを与え、じっくり育成するというメリットがある。個人はそのメリットを活かし、組織はそのためのサポートを強化することで組織の魅力を高めるべきだ。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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