転職ノウハウ

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一度辞めた会社に出戻ることはアリなのか

転職市場の活性化に伴い、以前に在籍していた会社へ再びUターンする、いわゆる「出戻り転職」を認める企業が増えている。新興企業ならよくある話かもしれないが、この現象は労働組合があって毎年春闘をやっているような大手企業においても起きている話なのである。

従来、終身雇用ベースの日本企業では、途中で自発的に辞めた人間を再び受け入れることはタブーだった。出戻りどころか、そもそも離職すら想定していなかった企業も少なくない。筆者の直接知っているケースでも、90年代に転職しようと退職願を出したところ、役員が出てきて慰留され、それでも退職を押し通したところ「君は我が社の看板に泥を塗った。今後は当グループと一切関わらないように」と絶縁された人間もいたほどだ。

にもかかわらず再入社を認める流れが増えているのは、人手不足という理由に加え、企業が出戻り組の持つ意外な強みに気づいたためだ。彼らの持つ“強み”とはなんだろうか。それを理解すれば、キャリア形成上での一つの指針ともなるだろう。

「出戻り組」の持つ意外な強みとは

出戻り組の持つ強みはいくつもあるが、まず何といっても育成コストが低く抑えられる点が大きい。日本企業はまだまだ新卒一括採用ベースなので、同じ業種であっても会社によって業務の進め方がまるで違うことも珍しくない。中途採用で一番怖いのは実はこの点で「職歴は申し分なく面接も高評価だったけれど、なぜか即戦力とはなれない」というケースは多々ある。その点、一度現場を見知っている出戻り組は何の心配もいらず、現場で即戦力となってくれるだろう。

また、定着率という点でも魅力だ。複数社を経験した上で改めてその会社で働きたいという人間は、間違いなく自社で働いたことのない人間よりも信用できる。選考時点では美辞麗句を並べて自己PRしていたのに入社3年で3割も離職していくと言われている新卒よりも、よほど人事から見れば頼もしく見えるものだ。

もちろん、他社で修行して一回り成長した人材として戻ってきてほしいというのが理想ではある。ただ、挑戦してみたけれどもやはり前職で頑張らせていただきたい、という(どちらかというと後ろ向きな)志望動機でも、筆者は問題ないと考える。

人事担当者の「出戻り組」に対する印象の変化に兆し

それからもう一つ、上記のようなメリットにくわえて、実は出戻り組には大きな強みがある。それは彼らが「人並み以上に挑戦する姿勢」を持っている点だ。たとえば、90年代の頃の大企業の人事担当者なら、出戻り組に対してはだいたいこのような印象を持っていたように思う。

「当社で失敗して転職し、転職先でも行き詰まって出戻ってくるとはなんという根性無しだ」

だが、現在の人事担当者の多くは、出戻り組に対して、以下のような印象を持つことが増えつつあるように思う。

「転職という形で果敢にチャレンジし、もう一度当社の門を叩いてくれた頼もしい人材だ」

20世紀の労働者に求められた素養は、決められたビジネスモデルに沿っていかに効率的に仕事がこなせるか、というものだった。だから1カ所に腰を据えコツコツ努力することが美徳とされ、腰の軽い人材はそれだけでマイナス評価をされるリスクが高かった。そうしたことから、減点方式の年功序列制度は、無難に人材育成できる優れたシステムだったように思う。

企業が労働者に要求する素養

ただ、ビジネスモデルそのものが変わり、刷新していくスピードが重要になってくるにつれ、ホワイトカラーには「主体的に考え、動ける」素養が要求されるようになっている。経団連が傘下企業に対して行った新卒採用に関するアンケート調査を見ても、この10年、選考時に重視する素養の第2位につけているのは「主体性」だ(ちなみに1位は「コミュニケーション能力」)。

そういう状況においては、たとえその選択が失敗だったにせよ、新たなキャリアに挑戦した人材は評価こそすれ、忌避するいわれなどない。むしろ人事からすれば、自己啓発するでもなく、かといって転職するでもなく、日がな一日机に座ったままルーチンワークしかやらないような人材こそ恐ろしいのだ。

企業が転職や出戻りをタブー視しなくなった背景には、組織がホワイトカラーに求める素養そのものが変わりつつあるという構造的な事情がある。筆者は安易な転職は勧めないが、まったく転職やキャリアについて無計画なまま過ごし、一つの場所に留まることもまたリスクであるという点は留意すべきだろう。

今回のポイント
出戻り組は、育成コストが安く、定着率が高い、といったメリットがある。
ホワイトカラーに求められる素養は変わりつつあり、腰を据えてコツコツ頑張れる人材より、主体的にチャレンジできる人材を企業は求め始めている。
そういう観点から言えば、リスクを取って転職し、また以前の職場に戻って働きたいという人材は決してマイナス評価はされないものだ。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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