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公務員は転職先として有望か

最近、公務員への転職について質問されることが増えた。おそらく、社会人経験者採用枠を新設する自治体が増えたことが理由だろう。また都道府県レベルでは、応募可能な年齢の上限を「60歳未満」と高く設定している自治体も少なくはなく、これまで転職を諦めていた中高年層からも注目を集めているようだ。

経済が大きく成長していた時代は、リスクよりもリターンに注目し、競争の激しい民間企業に自身を投資するのが合理的だった。逆に低成長の今、リターンよりリスクの低さを重視して公務員に転職するのは、キャリアデザインとしては悪くない選択肢のように思える。

だが、筆者自身は公務員への安易な転職はおすすめしない。理由は次の2点だ。

公務員への安易な転職をおすすめしない2つの理由

・官の人事制度は、キャリア形成や人材育成という観点で、充実しているとは言いがたい

民間企業では珍しくなくなった社内公募やFA制度といったキャリア選択ツールを導入する自治体も、多少は増えてきたが、まだまだ限定的であることからも分かるように、多くの場合、官の人事制度は、競争の中で磨かれた民間企業のそれよりも周回遅れて古いものだ。

研修制度はあったとしても、改訂されていないテキストを使用していたり、組織全体で統一された評価システムやマネジメントツールを持たなかったりといった自治体も決して珍しくはない。要するに、これからの伸びしろが大きい年代の人にとって、官というのはキャリアデザイン的には必ずしも恵まれた環境だとは言えない場所だということだ 。

・目先は安定していても、先行きは?

安定性についても、筆者は大いに疑問を持っている。インフラ系もそうだが、確かに競合相手のいない業種は、倒産とは無縁で安定はしている。だが、逆に言えば社会と一心同体ということであり、社会が衰退すれば共に沈んでいくしかない宿命だ。

2007年に財政破綻し、職員の賃金が4割カットされた夕張市が典型だろう。日本創生会議の予測によれば、2040年までに896の自治体が消滅する可能性があるという。恐らく、東京や名古屋といった一部の大都市圏以外の自治体では、職員の処遇に夕張並みの大ナタが振るわれることになるだろう。もちろん国家公務員も例外ではない。そしてそれは20年後に起こるかもしれないし、実際にはもっと早く起こるのかもしれない。

それから逃れるには、一社会ではなくグローバルに展開した企業の一員になるのが一番の近道だ。こういう状況で、あえてしがらみの中に飛び込んでいくメリットが、正直筆者には理解できない。

まとめると、人材育成やキャリア選択といった点で遅れており、長期的には賃金水準も頭打ちが見込まれるというデメリットが公務員には存在するということだ。一方で、これまで述べたことから公務員に転職しても問題ないだろうと考えられるのは、次のようなケースだ。

公務員への転職が有望なケース

・官の現場で活かせるだけのキャリアをすでに積んでいる

民間企業で一定のキャリアを積んでおり、それが官の現場で需要があるようなら、キャリアの幅を広げるという意味でも、転職は実りの多いものとなるだろう。

・官の仕事にやりがいを見出せる

官の仕事は利益追求ではないし、当然ながら給料にフィードバックされる余地も少ない。つまり、日々の業務に対しやりがいを見出せるかどうかが満足度を左右する重要な要素ということになる。「自身の培ったキャリアで、故郷をプロデュースしていきたい」といった動機があれば、転職後に後悔するようなことはまれだろう。

・キャリアの折り返し地点を過ぎている

やはり20年後を睨めば、筆者は官の処遇には厳しい見直しが入ると予想している。逆に言えば、キャリアの前半戦を終えている40代以上ならそれほど心配しなくてもいいのかもしれない。あるいは、人口が増加もしくは横ばいの東京、名古屋といった都市部を選ぶのもいいだろう。

公務員への転職を考えている人の中には「民間企業と違って安定しているから」「楽なイメージがあるから」といった人が少なくない。そういう動機から公務員への転職を考えているという人は、上記のポイントを抑えたうえで、再度転職を検討してみることをおすすめする。

今回のポイント
官の人事制度は、キャリア形成や人材育成という観点で充実しているとは言いがたく、長期的には賃金水準も頭打ちが見込まれるというデメリットが公務員には存在する。そういった点から、公務員への安易な転職はおすすめしない。
公務員に転職しても問題ないと考えられるのは、「官の現場で活かせるだけのキャリアをすでに積んでいる」、「転職に明確な動機があり、公務員の仕事にやりがいを見出せる」、「キャリアの折り返し地点を過ぎている」などのケースだ。
公務員への転職を「民間企業と違って安定しているから」「楽なイメージがあるから」といった理由で考えている場合は、デメリットなどを踏まえたうえで再度検討することをおすすめする。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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