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後悔のないキャリアを築くために、残業代よりも重視すべきこと

残業の続いた翌月、給与明細を見るのが楽しみだという人は少なくないだろう。30代ともなれば時給の元となる基本給が上がり、時間外勤務手当が基本給を上回るということもあり得る話だ。実際、生活のためにある程度の残業は必要だと割り切る人も少なくない。

しかし断言するが、35歳以降に、ある程度のポジションまでいこうと思えば、残業代に依存する考えは捨てた方がいい。筆者の知る限り、残業代を気にする人材で一流となった人は一人もいない。そのような人はなぜか一様に35歳前後、ポジションでいえばリーダークラスで頭打ちとなってしまう。

理由はとてもシンプルで、組織に求められているミッションと残業が生み出すものはベクトルがまったく異なっているためだ。20代前半なら基本給も低いので残業手当に期待するのも仕方ないが、20代後半以降、そういった働き方は長期的なキャリアビジョンを大きく狂わせる恐れもあるため、注意が必要だろう。

労働を時間で測る人が陥りやすい3つの罠

たしかに、“残業”には危険な魅力があるのも事実だ。とりあえず誰でも手軽に達成感が味わえるし、それを裏付ける手当も支給される。単に仕事の進め方が非効率なだけであっても組織から承認されているという安心感も得られるわけだ。だが、この奇妙な充実感は以下のようなプロセスで個人のキャリアデザインを大きく狂わせることになる。

1.仕事の付加価値を意識しなくなる
組織がホワイトカラー職に期待するのはあくまで付加価値の創造であり、量や時間の長さではない。だが時給に軸足を置きすぎると、付加価値など頭から消えてひたすらルーチンワークに特化してしまう傾向がある。

例えば「絵を描く」という“成果”に対して報酬を払うなら、画家はなんとかして素晴らしい絵を描こうとする。しかし「机に向かっている時間だけ時給で払う」と言えば、画家は適当な絵をじっくり長時間かけて仕上げようとするだろう。

2.残業を理由に、やるべきことをやらなくなる
また、残業は「本来やらなければならないことをやらないための免罪符」にもなり得る。今後のキャリアに必要な勉強よりも、目の前にある仕事に向き合っている方が楽なケースは往々にしてある。成果をより一段高めるために外部と折衝するよりも、手の込んだ資料を増やす方が手っ取り早いと感じる人は少なくないはずだ。

3.人材の市場価値がどんどん下がっていく
ちょっと想像してみてほしい。在席時間だけは一丁前だが何か新しいチャレンジや課題解決を遂行するわけでもない。自己啓発や読書なんてものにはさらさら興味がなく、新しい取り組みには消極的。時間に軸足を置いた先に待つのは、市場価値の著しく低い残念な人材である。きっとどんな職場にも、一人くらいは該当する人間がいるはずだ。

自分を豊かにするのは自分だけという真実

それでも、出世を諦めてでも時間外手当を手にした方がいいと思う人もいるかもしれない。実際、転職先を選ぶ条件として「いくらでも残業できて、手当も青天井で支給される会社」を挙げる人もいる。

だが、そうした一見ホワイト企業のように見える企業というのは、たいてい基本給やボーナスを低く抑え、残業代に原資を回しているものだ。

つまり、実態としては「いくらでも残業付け放題」なのではなく、「そもそもいっぱい残業しないと人並みの手取りにならない」ということであり、筆者の感覚ではそっちの方が立派なブラック企業だと思う。

目先の残業代のさらにその先に待っているのは、じり貧で味気のない未来でしかない。結局のところ、ホワイトカラーは自分の生み出した付加価値以上には報われないため、豊かになりたいのなら付加価値を高めるしかないということだ。

今回のポイント
残業には、手軽な達成感や組織から承認されたような錯覚といった偽の充実感がある。
残業の達成感や充実感に甘んじてしまうと、仕事の付加価値が高まらず、身に付けるべきものも身に付かず、人材の市場価値は大きく低迷するリスクが高い。
ホワイトカラー職が豊かになるには、自らが仕事で生み出すものの付加価値を高めていくのが唯一の方法だ。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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