転職ノウハウ

転職先で苦労するなら異業種に行け

いざ転職活動を始めてみたものの、このご時世、なかなか思うようには進まないという人が少なくない。そういう人に対して、筆者は常にいくつかのアドバイスをすることにしている。主なものは以下の3つだ。

1. ベンチャー企業、外資系企業を視野に入れること
2. 地方なら大都市圏、大都市圏なら地方を視野に入れること
3. 異業種を視野に入れること

1については、これまでも何度か述べてきた。伝統的な日本型組織は35歳以降の人材の採用ハードルが上がるため、非伝統的な組織を視野に入れた方が成功する確率が高くなるという話だ。

2は、一言で説明するのは難しいセオリーだが、筆者の経験上、その土地での転職活動で行き詰まった人は地域を変えると意外にうまくいくことが少なくない。なかでも大都市と地方のシフトが好結果をもたらすという経験則だ。

だが、現在の労働市場においては、3が意外にもっとも意義あるアドバイスかもしれない。

異業種への転職については、以前も「自分は転職市場で通用するようなスキルがない」と嘆く人向けに、異業種への挑戦を勧める理由とその際のアピールのポイントをお伝えした。今回は自分のキャリアを積んできたという人でも、転職先が思うように決まらず苦労しているなら、異業種への挑戦をおすすめしたい。また、異業種への転職は、長い目でみればキャリアを伸ばすことにつながるということを、実例を用いて紹介しようと思う。

異業種転職は競争率が低く、超えるべきハードルも下がる

状況にもよるが、ある程度スキルを持っていたとしても誰かが同じ業界内で転職しようとした場合、競争率は大抵、どんと上がっているものだ。

業界全体の低迷や競争の激化といった「彼、彼女を転職に追いやった事情」は、ほかのビジネスパーソンの背中も後押ししているためだ。特に、早期退職を募集する企業が複数存在する場合は要注意で、普段は絶対に転職市場には出てこないようなエース級が割増退職金を手にぞろぞろやってくるため、転職のハードルは一気に跳ね上がることになる。

最近「とある業界の再就職が難しい」といった話をよく耳にするが、その業界ではここ10年ほど早期退職やリストラが常態化しており、転職市場に人材があふれていることが大きな理由と思われる。こうした場合は、筆者は思い切って異業種それも前職とまったく無関係な業種に挑戦することをおすすめしたい。

異業種に挑戦すると、まずは転職市場にあふれているであろう同スペックのライバルとの競合を回避することが可能だ。加えて、採用ハードルもある程度は下がる傾向がある。というのも、恐らく採用担当者は異業種からの挑戦者のキャリアを、異業種であるがゆえにそれほど深くは理解できない可能性が高いためだ。

そうなると「よくわからないからダメ」というよりも「わざわざ業種を超えてウチを受けに来てくれる姿勢は好ましい」と見えてしまうのが採用担当の性というものだ。

異業種へも挑戦していく姿勢こそが、キャリアを伸ばす

最後に具体例も紹介しておこう。筆者の知人のA氏は大学卒業後に地方公務員としてのキャリアを地道に積んできた男性だったが、30歳を機に転職活動を開始し、現在は都内のIT企業の企画部に在籍している。

「特に何の専門性もなく、地味な事務作業をコツコツこなしてきただけ」というA氏だったが、どこの会社にも地味で堅実さの要求される仕事はあふれており、それができる人材へのニーズは必ず存在するものだ。

また、「安定だけが人生の目標ではない、新たな環境に身を置いて成長したい」というのがA氏の転職の動機だが、先述の1~3のセオリーを見事に踏まえつつ、前向きな姿勢をしっかりとアピールできたことも大きいだろう。

また、現在は外資系企業で人事マネージャーを務める40代のB氏も、新卒で就いた仕事は地方の自動車会社の営業職だった。そこから、やはり地方の中小企業の総務部に移ってスキルを磨き、30代で地域と業種を飛び越えて今のポストに収まるというコースも、上記のセオリー通りと言っていいだろう。

筆者は、一つのキャリアを深く掘り下げて、それを武器として転職していくというスタイルは、理想ではあっても現在の日本企業においては現実的ではないと考えている。というのも職能給という業務内容の曖昧な賃金制度の中、会社都合でいろいろな仕事を詰め合わせのようにやらされるのが一般的だからだ。

むしろ、ある程度の幅の広さを武器とし、積極的に異業種へも挑戦していく姿勢こそが、長い目で見ればキャリアを伸ばすことにつながるというのが、筆者の経験から得たスタンスだ。

今回のポイント

転職活動で行き詰まったら、異業種への挑戦を視野に入れると意外と道が開けるものだ。
「特に専門性を要求されない地味な仕事」はどこの会社にも存在する。そうした仕事しか経験していない人は、裏を返せばどこの業界にも転職できる可能性があるということでもある。
異業種への挑戦はうまく活用すればキャリアの弱点をカバーする貴重な武器となる。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

バックナンバー

ポスト終身雇用時代のキャリアデザイン

最近、日本を代表する大手企業各社による大規模な“リストラ”が相次ぎ、その現象は業種を問わず広がっている。好調な企業業績を背景に、2018年度の税収が...

「やりたいこと」と「今の仕事」とのギャップの埋め方

筆者は仕事柄、しばしば「自分の理想の仕事と今の仕事の間に存在するギャップをどうすべきか」といった質問を受ける。総合職として会社から与えられた仕事に向...

令和時代の転勤事情 「転勤を拒否する若者たち」が企業を変える

近年、転勤に抵抗を覚える若者が増え、企業の側も、転勤のない勤務地限定コースを用意したり、原則として同意のない転勤は命じないという方針を立てたり、さま...