転職ノウハウ

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転職で“逃げ”はどこまで許されるのか?

転職において、スキル以外で採用担当者が最も重視するものは、求職者の動機だ。

「より自分を成長させたいから」
「新たな活躍の機会を得たいから」

といった前向きな動機を、中途採用面接ではしばしば耳にする。
(もちろん「もっと高い報酬が欲しいから」というのも前向きで素晴らしい動機だ)

一方、人間にはネガティブな動機も同じくらい、というかそれ以上に存在していて、実際にはそういった後ろ向きの動機の方が多いものだ。たとえば、以下のようなネガティブな動機から転職を考えたことは、誰でも一度くらいはあるはずだ。

「職場の人間関係に疲れたから」
「仕事がどうにも面白くない」

人が人である以上、“逃げ”と呼ばれるようなネガティブな動機は永遠に湧いてくるものだ。であれば、転職希望者はそういった動機とどのように向き合うべきなのだろうか。今回は転職と“逃げ”についてまとめてみたい。

許される“逃げ”と許されない“逃げ”

常に人手不足で苦労しているような企業を除いて、一般的に、ネガティブな転職理由というのは好まれない傾向がある。理由はシンプルで、それがいかなる問題であれ、問題解決能力に欠ける人材を、企業はわざわざ金を払ってまで採用したいとは思わないためだ。

たとえば「今の職場では大した仕事が任されず、面白くないから転職したいんです」という人材は、大手であれば100社受けてもまず内定は貰えないはず。彼は「メインストリームの業務に食い込む」という社内プロセスに対して逃げているからだ。

「人間関係が合わないので転職を希望します」という動機も同じで、家族でもない限り100%順調な人間関係などありうるはずもなく、それを自力で調整できない人材は単に逃げているだけとみなされて当然だ。上記のような人材は「うちで採っても同じ理由でまた転職したいと言うだろう」というのが、一般的な人事のスタンスと言っていい。

要するに、組織人であれば自力で乗り越えねばならない課題から逃げている人材は、どこの会社からも冷ややかな目で見られるということだ。

一方で、すべての“逃げ”が敬遠されるというわけでもない。一見前向きではない動機であっても、「組織人云々には関係なく、個人ではどうしようもない理由からの“逃げ”」については、基本的に採用担当者は大らかだ。

たとえば「両親が高齢につき、実家近辺の企業への転職を希望します」という求職者は、歓迎こそされ、敬遠する企業はまずないだろう。

家族の健康や子どもの進学を理由とした転職も同様で、こうした動機なら筆者はむしろ正直に面接で伝えた方がいいと考える。採用担当も人の子なので、勤務地などで便宜を図ってくれるかもしれない。

これからの“逃げ”との付き合い方

というわけで、許される“逃げ”の場合は問題ないけれども、許されない“逃げ”を理由に転職を計画中の人は、もう一度自己の動機を見直してみることをお勧めする。

といって、なにもより見栄えの良い転職理由をでっちあげろ、という気はない。そういう付け焼刃は得てしてすぐ見破られるものだし、仮に転職に成功したとしても、後で苦労することになる。

筆者が勧めているのは、自分が逃げようとしている課題にまずは向き合い、その原因を突き詰め、改善する努力をしろということだ。たとえば「仕事がつまらない」のであれば、まずはできる範囲で認められるよう成果を上げたり、上司や同僚とのコミュニケーションをしっかり取り、担当業務の割り振りを見直してもらったりするべきだ。

1年なり2年なり、そうした努力を行ったうえで一定の成果が出た後なら、その後の転職はもはや“逃げ”ではない。堂々と「より多くの活躍の場を求めての転職です」と伝えればいいだろう(というかその時点でもはや転職する必要がなくなっているという人も多いはず)。

では、どう取り組んでも今の職場では課題の改善が見込めない人はどうすべきか。全力を尽くしたうえであれば、堂々と転職すればいいだろう。なぜか?「全力を尽くしたものの、希望するモノが手に入らず、新たな挑戦の場を求めたい」という動機はもはやネガティブでも何でもなく、“逃げ”というよりも“攻め”の姿勢というべきものだからだ。

そういう意味では「許されない“逃げ”」なるものの本質とは、自己からの逃避という点にあるのかもしれない。

今回のポイント
転職動機では“逃げ”は敬遠される。それは問題解決能力に欠ける人材だとみなされるためだ。
一方、家庭の事情など個人ではどうしようもない理由での転職は許容される傾向がある。
まずは自分の転職動機に向き合い、最大限改善に向けた努力をすることで、たとえ成果が出ない場合であっても“逃げ”は“攻め”に変えることができる。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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