転職ノウハウ

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ストーリーの重要性

同じような経歴や年齢の人であっても、転職力の高い人と低い人がいる。もちろん本人のスキルや細かな職歴により生じる差なのだが、転職力の高い人にはある共通点が見て取れる。それは、わかりやすいストーリーの存在だ。

というわけで、今回は“物語”という観点からキャリアデザインについてまとめてみたい。

「キャリアデザイン上手」に共通する物語

数年前から、主にマーケティング戦略の分野でストーリーの重要性がフォーカスされるようになった。消費者は同じような商品が並んでいた場合、共感を呼ぶようなストーリーが背景に見える商品を選ぶという意味だ。

たとえば同じイタリア製オリーブオイルのボトルが並んでいたとして、その中に「歴代ローマ教皇の愛した伝統の一本!」みたいな説明書きが印刷されているものがあったなら、少なくない数の日本人はそのボトルを手に取るはず。

実は中途採用において、企業の採用担当者もまったく同じスタンスだ。

転職市場で高く評価される人は、決まって職歴からわかりやすいストーリーが見て取れる。あるいは、面接でとても明快な物語を説得力を持って語れる。同じような経歴の人材が複数競っているとすれば、人事が選ぶのはストーリーが明快な方だろう。

一つ例を挙げておこう。自動車のディーラー会社の営業マンから、入社3年目で中小企業の総務部に転職したA氏という人物がいる。彼はさらに5年後に大手系列の機械メーカー人事に転職し、40歳の現在は外資系メーカー日本法人の人事マネージャーとして人を管理する側に回っている。

「キャリアのスタートは営業職でしたが、より専門的に人材を管理するスキルを身に着けたいと考え、中小企業で労務管理全般を経験、その後はより大きな組織でキャリアに磨きをかけ、現在は日本法人にて人事戦略全般を担うポストに就任しています」

というわかりやすいストーリーが、本人の履歴を見ただけで筆者の頭にはぱっと浮かんできた。
(そして、実際その明快なストーリーが語られた)

逆に、履歴書を見てもなんのストーリーも思い浮かばない人に対しては、採用担当者は相当突っ込んだ質問をしてくることだろう。無計画に流されて転職を繰り返すジョブホッパーのようなタイプの履歴書は、何回見直してもなんの物語もイメージできないものだ。

一貫した“あらすじ”よりも物語を面白くするものとは

とはいえ、なにも筆者は「キャリアが一貫していてわかりやすくない奴はダメだ」と言うつもりはない。実際、映画でもドラマでも、単調な一本道のあらすじより、起承転結があってメリハリの利く筋立ての方が面白いという事実に異論のある人は少ないだろう。キャリアも同じで、挫折や方針転換があっても、そのこと自体を気に病む必要はまったくない。

では、挫折や方針転換があっても評価される人とされない人の違いはどこにあるのか。それは現時点での成長性である。

一般論だが、採用担当者は、自社より格上の組織出身の求職者を強く警戒する。その転職に対してなんの成長性も感じられない人材、つまり一定のキャリアは持っていても、もう成長が止まっているかもしれない人を採用することは、「落ちるナイフ」を掴んでしまうことにならないかと危惧するためだ。

逆に、小さな企業から努力して成長し、門戸を叩いてくれたような人材は(たとえ学歴や職歴がライバルたちに見劣りするとしても)魅力的な人材に映るケースが多い。

実際、筆者は過去に、一流大卒のキャリア官僚経験者を落として、学歴も出身企業も聞いたことのない求職者を採用したケースが何度もある。現在も成長の真っ最中であるそうした人材への投資は、将来の大きなリターンをもたらす可能性が高いからだ。

日本人は昔から「こつこつと努力して成長する人間像」が大好きだし、その人物が自社の門を叩いてくれたとなればなおさら嬉しい。企業の大小はあくまで一般論だが、挫折や方針転換があっても評価されるのは、今後の成長性を感じられる人材であるということを覚えておくといいだろう。

そのため、日頃のキャリアデザインに際しては、自身の理想とするストーリーを意識することが基本となる。

一方で、一貫性や見栄えに固執することなく、興味のあることにはどんどん挑戦することをおススメしたい。興味のあることに全力で挑戦すれば、挫折しても得るものはあり、長い目で見ればそれもまたキャリアの血肉となってくれるだろう。

今回のポイント
転職力の高い人は、職歴を見るだけでわかりやすいストーリーが思い浮かぶものだ。
とはいえ、わかりやすいだけが良いストーリーの条件ではない。採用担当は現時点での成長率をとても重視するためだ。
「興味のないことをやらされる」キャリアは回避したいが、「興味のあることに全力で取り組む」のなら、たとえ失敗してもそこから身に付くものはきっとあるに違いない。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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