転職ノウハウ

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転職する前に確認すべきチェックポイント

転職はしたいけれども、転職で失敗したらどうしよう。恐らく多くの人は、そうした悩みを一度は抱いたことがあるに違いない。筆者も仕事柄のせいか、知人からそうした相談をしばしば受ける。

その転職計画の成功確率は、どの程度のものなのか。参考までに筆者のチェックポイントを紹介しておこう。筆者は、転職相談者に対して、いくつかの質問をすることにしている。

具体的な例があった方がわかりやすいだろうから、筆者の後輩で大手生保に新卒で入社したA氏35歳に登場を願うとしよう。筆者ならA氏に、まず以下の質問をぶつけてみる。

「転職すれば給料は減るかもしれないけど、大丈夫?」

大手日本企業から転職して賃金が上がることはまずない。同じ規模の同業他社に転職できたとしても横ばい、規模の小さな会社への転職なら確実に1割~2割は下がる。
(業界で名前が売れているほどのスーパーエリートなら、ワンランク上の処遇で迎えられることもある。だがそういう人は他人に相談なんてしないだろう)

与えられる役割に応じて処遇の決まる職務給ベースの企業(年俸制の外資、ベンチャー企業等)なら2~3割増し、時には2倍以上というケースもあるが、裏を返せばそれだけリスク価格も織り込まれているということであり、低パフォーマンスが続けばクビもありうる。

人によってはローンや子供の進学費用も考慮しないといけない年代だろう。だからこそ、筆者はまず給料に関する基本的な質問をぶつけてみるわけだ。それでびっくりするようなら、とりあえず現段階での転職は控えた方がいい。

逆に言えば、転職を視野に入れた段階で、マイホームの長期ローンは控えるか、せめて年収が2割程度減っても無理なく負担できる額に抑えておくべきだろう。

ちなみに、A氏の回答は以下のようなものだった。 「問題ない。自分は賃貸だし、貯金もあるから年収が2割下がってもやっていける」ということで、次の質問に進むとしよう。

「転職先の目途はあるの?」

「もちろんあるさ!で、その転職先についても気になっていることがあるんだけど…」とくれば、こちらとしても対応しやすい。だが、残念ながら「それを聞きたいんだ。どういうところに転職すればいいかな?」と転職先そのものを質問対象に挙げる大人が多いのも事実だ。

一応言っておくと、その人の業務内容をすべて把握し、世に数多ある職場の中から相応しい転職先候補を見つけてくれる第三者などいない。もちろん筆者にもわからない。

あえて言えば人材紹介会社の転職エージェントがそれに近いが、業務の中身や相性までを理解してマッチングしてくれるのは、本当に優秀なエージェントだけだ。求職者と求人の表面的な情報でマッチングするのが基本なので、「任せておけば勝手に自分にぴったりな転職先が見つかるだろう」とは思わない方がよい。

となると、恐らく「自分の潜在的な市場価値と引き合いのありそうな企業候補」を一番よく理解できる立場にあるのは、実は相談者本人ということになる。

大きく深呼吸して、まずは自分の身に着けているスキルと業界地図でも整理することから始めるといい。そのための方法は既に書いている。転職はするにしても、そうした下準備をしてからの話だろう。不安を紛らわせたいがための質問なら恋人や家族にでもするといい。

「実は知り合いから誘われている会社があって、小さな会社だが将来性を感じているところだ」という返事を聞けたなら、筆者は安心して最後の質問に移る。

「とりあえず、今の職場でなんとかならないの?」

転職が成功するかどうかの基準として、転職の理由を挙げる識者が多い。それがやりがいや収入アップといった前向きなものならプラスだが、ネガティブなものなら単なる“逃げ”であり失敗のリスクが高いというロジックだ。

わからないではないが、現実問題として本当の転職動機は第三者にはなかなか見えづらい。いや、本人ですらわかっていないケースも多い。

口ではやりがいと言いつつ、本当は面倒な人間関係から逃げ出しただけであり、やりがいに恵まれているはずの転職先からも数年でエグジットというようなケースを、筆者は両手に余るほど見てきた。

そこで筆者なら「転職の目的が何にせよ、今の職場でなんとかなるでしょ、このままとりあえず3年ほど頑張ってみたら?」と聞いてみる。このまま3年間、今の職場に身を置き続けることを真面目に想像させれば、誰でも本音が出てくるものだ。

それが本当に今の職場で満たせないものなら、成功しようが失敗しようが、その転職には意義がある。逆にそうでないなら、もう少し我慢してみる方がいい。転職先で求められる我慢の量の方がきっと多いからだ。

「いや、自分はもう今の会社では上に行けそうもないし、せいぜい同じ事業部門内で営業所をローテーションする程度だろう。それであと30年過ごすつもりはない。30代のうちに自分を必要とする新興企業にいって、大きく勝負してみたいんだ」

そうA氏のように言ってくれるなら、筆者は笑って背中を押してやるだろう。

A氏のケースは過去の実話だが、A氏のように腹をくくることができる人であれば、きっと転職先でも明るい未来が待っているに違いない。

今回のポイント
大手からの転職で給料が増えるケースはまれである。増えたように見えても単年度ベースの話で、長期で考えればマイナスというケースも多い。転職を前提とするなら、ローンなどは分相応の額にとどめておくべきだ。
転職の前に、自身の市場価値と市場全体のマップくらいは頭に叩き込んで整理しておくべきだ。
何のために転職するのか。今の職場のままで数年過ごすことを想像すれば、足りないものが見えてくるはず。それが転職先にしかないのであれば、もはや迷うことはないだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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