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応募したい会社がブラック企業かどうか迷った時に考えるべきこと

最近、就職や転職に関する質問でもっとも多いのが「○○はブラック企業ですか?」というものだ。それだけ関心の高いキーワードなのだろう。とはいえ筆者から見ると、質問者の多くは現実が見えていないままネットを漂う情報に流されて右往左往しているようにも見える。

というわけで、今回は極めて現実的な“ブラック企業かどうかの見極め方”について説明しよう。

“ホワイト企業”という幻想

おそらく多くの人は漠然と「世の中にはブラック企業とホワイト企業が混在している」くらいに考えているはず。だが、夢を壊すようで申しわけないが、そもそも「長時間労働やサービス残業がなくて、待遇も安定したホワイト企業」なんてものはこの世には存在しない。

というのも、今どきホワイトカラーで「机に座っていた時間に比例してきっちり成果を出せてご褒美ももらえる」なんて構図自体がフィクションなので、どこの大手企業にも少なからずサービス残業は存在するからだ。

ごく稀に「うちは、残業代は青天井でもらえますよ」と嬉しそうに話す人もいるが、その手の会社はたいていボーナスなり基本給なりが低めに設定されて帳尻が合わされているだけなので、生産性の低い生活残業バカにみなでカンパしてやっているようなものである。ある程度の生活残業でもしないと生活水準が維持できないはずなので、筆者は間違ってもそんな会社に行きたいとは思わない。

また、長時間労働や有給休暇の使いにくさは、それ自体が終身雇用を守るために必要不可欠なツールであって、むしろ優良企業ほどそうした傾向は強いものだ。例えば、日経の就職人気企業上位225社のうち、労使協定によって過労死認定基準以上の残業が可能となっている大企業は60%以上におよぶ。実際、月100時間超の残業なんて大手企業でも普通だし、過労による労災なんて決して珍しい話ではない。

たまにメディアで“従業員を大切にするホワイト企業”的な記事が垂れ流されることもあるが、筆者に言わせればそうした企業は単に元々のベース給が低いだけの中小企業で、いっぱい稼いでいる人の賃金も抑えてほかの人に回しているだけに過ぎない。がっついたビジネスパーソンを放り込めば、きっと半年で「こんなブラック企業辞めてやる!」と言って逃げ出すことだろう。

ブラック企業を規制すればホワイト企業になるのか

世の中には「ブラック企業を規制すればみんなホワイト企業になる」なんてことを言う輩もいるが、あれはそうやって情報弱者から小銭を巻き上げるだけのビジネスモデルなので、未来ある若手は相手にしない方がいい。

むしろ、ありもしないホワイト企業伝説にふりまわされることで、もっと重要な本質的判断ができなくなっている人が大勢いるように見える。では、重要な本質とは何か。それは自分自身がこれから先、どういう風に働いていきたいのかという点だ。

“ホワイト企業”なんてありゃしないという前提に立てば、世の中には2種類の会社があることに誰でも気付くはずだ。

1.耐える価値のあるブラック企業
2.耐える価値のないブラック企業

1番は、ほとんどの大手企業や公務員が該当する。例えば、ゴールデンでばんばんCMを流していて、誰もが知っている大企業であれば、月100時間残業しようが残業代に上限があろうが、耐えて働きたいと願う人は多いだろう。何と言っても大手だから雇用は安定しているだろうし、40代以降はそこそこ出世もさせてもらえるかもしれない。実際、筆者の同期でそうした大手企業に勤めている人間は(家庭を犠牲にして滅私奉公していたり年俸制で残業代ゼロであっても)それほどの不満はなさそうである。みなそれが「耐えるに値する」と判断しているためだろう。

2番についてはその逆で、残業も多いし手当も出ないし有給も取らせてもらえないといった諸事情は同じでありながら、それを耐えることによるメリットが必ずしも明確ではない企業群である。イメージ的には、何年頑張ってもほとんど昇給せず、出世もできそうにない会社を思い浮かべてもらえるといいだろう。筆者はあまりブラック企業云々といった議論は好きではないのだが、あえてそうした会社を定義するとすれば“見返りのないきつさ”こそ相応しいと考えている。

どこがブラック企業かは、自分で判断する問題

ただし、そこに明確な線を引けるわけではない。ひょっとすると、世の中には「外食は何年働いても現場レベルだからブラック」と漠然と思っている人もいるかもしれない。だが、筆者の後輩に、東大法学部から経産省に入り、その数年後に(しばしばブラックとネットで言及される)某大手外食企業に転職した人間がいる。彼はいずれ外食企業を起業予定だったため、新興外食の雄であるその会社のノウハウを吸収する目的で転職したもので、彼にとっては立派な“見返り”があったということになる。

また「金融や大手製造業こそ見返りのある会社だ」と思っている人もいるかもしれないが、それも時代遅れな発想だ。そうした会社で色濃く生き残っている年功序列制度の場合、売上と組織が拡大し続けない限り、ポストは慢性的に不足し、若手の昇給は頭打ちとなる。90年代後半以降、そうした大企業においても数年で離職する若者の存在が問題となったが、それは彼らが「ここにいても見返りなどない」と気付いた結果である。(※)

要するに、“見返り”は確かに重要ではあるが、その会社で見返りが得られるかどうか、そしてそもそも何が見返りになるかは、ネットに転がっている口コミ情報や他人に教えてもらうのではなく、自分自身で判断するしかないということだ。長時間残業などの噂はあるにせよ、その会社の中に自分に必要な見返りがあると思うのなら、迷わず入社するといい。

出世なんていらないからマイペースで働きたいと言うのなら、正社員にこだわらずにそういう仕事を探すべきだろう(そういうタイプは人事がもっとも嫌うタイプなので正規雇用での内定は難しい)。それがおそらくは、自身のキャリアを充実させる基本戦略であると共に、“ブラック企業”に入社して後悔しないためのもっとも合理的なアプローチだろう。

(※)2010「経済環境の変化と日本的雇用慣行」より

今回のポイント
そもそも、日本にホワイト企業なんて実在しない。あるのは“耐える価値のあるブラック”か“耐える価値のないブラック”の2種類だけだ。
そんな中、ネットの口コミ情報に踊らされてブラック企業探しに付き合うのは時間の無駄である。自らのキャリアをデザインしようと志す者なら、自分にとっては何が必要で何が不要かを見極め、それに近づくことに時間を費やすべきだろう。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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