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転職でよくある疑問、ジンクスについて

本コーナーの連載を始めてから、しばしば転職に関連した質問をもらうようになった。というわけで、今回は「転職でよくある質問やジンクス」についてまとめておこうと思う。一部連載内容と重複するものもあるが、通しで眺めてみると、日本の労働市場の特徴がスムーズに理解できるだろう。

新卒はポテンシャル、中途はスキル

ジンクスの話の前に、いったん日本の労働市場について整理してみたい。

日本の労働市場を眺めてみると、大きく2つのエリアに分けることができる。まず、中堅以上の企業や公務員を中心とした終身雇用・年功序列型のエリアで、こちらのエリアに入るには、新卒採用が主な入り口となる。

なぜ新卒採用なのかと言えば、それは終身雇用だから。まっさらな人材をゼロから自社に特化した形で育成するのが合理的であり、そのためにはポテンシャルのありそうな「MARCH以上の若い人材」をセレクトするのが望ましい。

3月以降、同じようなリクルートスーツを着た大学生が大手町に列を作るが、あれはまっさらでポテンシャルのありそうな人材が「わたしたちはいかようにも染められるし、伸びしろもありますよ」と大企業にアピールしていると考えるとわかりやすい。

一方、もう一つのエリアは終身雇用や年功序列色の希薄な即戦力エリアで、こちらは中小企業や新興企業、外資系企業が中心となる。ゼロから長く育てる気がないのだから、当たり前の話だが新卒採用でポテンシャルなんてあやふやなものを基準に採用する必要はない。こちらの企業は即戦力重視の中途採用がメインだ。

90年代までであれば、平均的な日本人にとっては前者の終身雇用エリアが人気だった。一流大の学生は名の知れた大企業に入って安定したキャリアを積むことが相応しいとされ、実際、それなりの魅力はあったように思う。

でも、この10年で様相は大きく変わり、大手であってもリストラ対象とされるケースが珍しくなくなり、終身雇用神話は大きくかげることとなった。ちなみに、東大生の就活で“新御三家”と呼ばれる人気企業はサイバーエージェント、DeNA、GREEとされた年もあった。いずれも即戦力エリアの企業だ。

こういう状況を踏まえれば、以下のジンクスの成否についても理解できるだろう。

転職でよくある疑問、ジンクス

その1「中小から大手への転職は不可能」
中途採用の軸が即戦力性=キャリアであることを理解すれば、このジンクスが誤りだというのはすぐにわかるはず。

むしろ一般的な人事担当は、新卒時には採用対象とはならなかったような人材が、中小企業の現場で叩き上げて自社の門を叩きに来てくれたことを喜ぶ傾向がある。学歴に自信は無いけど腕には自信があるという人はどんどん挑戦するといい。

その2「大卒以外は対象外?」
これもよく聞かれるが、少なくとも求人内容に“大卒以上”と示唆するような表現がなければ気にする必要はない。筆者自身、一流国立大出身の求職者を落とし、専門学校卒の候補を採用したことは複数ある。

その3「最初に入社した会社の名前は、その後のキャリアにもずっと影響する」
これは若干注意が必要で、基本的に現時点でのスキルや積み重ねてきたキャリアがモノを言うことは間違いないが、それでも「なぜとても重要な機会である新卒時にそういう会社に入社したのか」という点は採用担当の興味を引くだろう。それなりに納得性のあるストーリーが語れることが望ましい。

その4「転職35歳限界説」
これは90年代から長く語られているジンクスであり、21世紀の今でも健在と言っていい。

とはいえ、その理由は「年功賃金的に35歳を超えると割高に映るから」というもので、当然ながら終身雇用・年功序列エリアの企業に限ったジンクスである。

たまに「40代50代での転職も最近は増えている」と言う人もいるが、よくよく話を聞けば、(人材不足感の強い)中小企業や新興企業が年齢にこだわらずに即戦力性で採用しているというだけの話であり、2つのエリアを混同した言説なので注意が必要だろう。

ちなみに、終身雇用エリアでも35歳オーバーの転職はもちろん可能ではあるが、その場合はきわめて高い専門性か、マネージャーとして実績のある人材に限定される。要は「年齢にふさわしいキャリアを積めている人材」ということだ。

ジンクスに惑わされないために

その5「転職者の過半数は転職を後悔している」
これもしばしば耳にする意見だが、実は筆者も同意見である。といって、じゃあ転職は悪だから今の会社にしがみつけなんて言う気もさらさらなく、要は「正しいプロセスを経ぬまま行き当たりばったりで転職する人」が多いというだけの話だ。

本連載でもたびたび述べているように、転職に際しては社内価値より市場価値を意識したキャリア形成が一定期間必要であり、転職活動に際しても守っておくべき手順はいくつもある。それらを通じてしっかり準備をした人間で、傍から見ても明らかに「転職して失敗したな」というケースは、筆者は知らない。

その6「普通のサラリーマンには転職できるようなスキルが身に付いていない」
筆者が最もよくされる質問はこれで、どうやら多くのビジネスパーソンは「転職できる人材は幸運にも業務を通じて専門性を身に付けることのできた一部のビジネスパーソンだけだ」と思い込んでいるらしい。これは大きな誤解だ。

日本は長く転職市場が未整備だったため、転職を通じた業務プロセスやスキルの一般化がほとんどなされていない。だから、どんなに優秀な人材であっても、転職先ですぐに通用するスキルは持っておらず、しばらくは慣らし期間が必要なことくらい、どの人事担当も理解している。

重要なのは、与えられた環境の中でいかに前向きに取り組み成果を上げられるかだ。その点をしっかり押さえておけば、未知の組織への不安におびえる必要はないだろう。

加えて、転職活動に際しては、転職エージェントにしっかりキャリアの棚卸しをしてもらい、自身の強みとウィークポイントを理解しておくことも重要だ。そうして準備をしておけば、ジンクスなどに惑わされることなく、転職を成功させることができるだろう。

今回のポイント
日本の労働市場は終身雇用・年功序列型エリアと即戦力エリアの2つに分かれる。前者は新卒採用、後者は中途採用が中心だ。
中途採用では学歴や前職の企業規模はそれほど重要ではなく、求められるキャリアやスキルがあるかといった即戦力性が重視される。
転職で失敗する人が多いのは事実だが、だからといって今の会社にしがみつく必要はない。きちんとしたプロセスさえ踏めば過剰に恐れる必要はなく、むしろ守るべき手順を守り準備をすることで、転職は貴重なキャリアアップの近道となる。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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