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会社が早期退職の募集を始めた時に考えておくべきこと

近年、終身雇用を是としてきた日本企業においても、早期退職などの雇用調整がずいぶんと一般化してきたように見える。2000年ごろまではまだまだ「歯を食いしばってでも社員の雇用を守る経営者」が誉めそやされ、早期退職募集やリストラは、背に腹を変えられなくなった企業がこっそりやるものと決まっていた。

だが現在は、組織そのものの生き残りのために、たとえ黒字であっても常に不採算事業の見直しに注力する経営者が増えている。

よって最近では、ごく普通の会社で働くビジネスパーソンでも、早期退職の募集を目にする機会は増えているはず。というわけで、今回はそんな場合の注意点をまとめておこう。早期退職というものは、上手く活用できればキャリアを伸ばすうえで貴重な追い風となるものだ。

早期退職に応募すべき人、してはいけない人

「2:6:2の法則」と呼ばれる有名な理論がある。どんな組織でも貢献度の高い上位2割、貢献度が高いとも低いとも言えないぼちぼちの6割、平均以下のパフォーマンスしか出せない下位2割に必ず分かれるというもので、筆者の経験でもほぼその通りと言っていい。

では上位2割の人間だけが早期退職に手を上げる資格があり、それ以外の人間が応募するのは崖から飛び降りるようなものかというとそうとも言えない。

筆者は常々、自身のキャリアをデザインする上では、社内評価と労働市場での評価という2つの指標を意識しろと述べてきた。仮に、縦軸を社内評価、横軸を市場評価とすると、人材は4つのパターンに分けることができる。

1.社内評価は高いものの、必ずしも市場評価は高くない終身雇用特化型ビジネスパーソン
2.社内評価も市場評価も高いエリートビジネスパーソン
3.社内評価は消して高いとは言えないが、市場価値の高い流動型パーソン
4.社内評価も市場評価も低い袋小路型ビジネスパーソン


組織の中の自身の位置づけがどうなのかは、自分が一番よくわかっているはず。であれば、後は感情を排して冷静に進路を決めればいい。2番のグループに属す人は、組織に残るもよし、割増退職金を受け取りつつ新たなキャリアに踏み出すのもよいだろう。とりあえず選択肢が多いというのはよいことだ。

自分が1番のグループかも、と気にかかる人は、とりあえず人材紹介会社に登録して、転職エージェントにキャリアの棚卸しをしてもらうといい。本当に社内弁慶か、それとも見どころのある人材か白黒つけてから手を挙げても遅くはないだろう。

だが、もっとも早期退職を必要としているのは3番のグループだ。労働市場から評価されるスキルを持ちながらも、運悪く適正な評価を得られていない人にとって、早期退職はキャリアアップを後押ししてくれるブースターのようなものだ。

筆者の経験でいうと、早期退職に応募した後で悔やむ人は、ほとんどが1番で、なかでもそれなりのキャリアを積んだ中間管理職に多いように思う。皮肉な話だが、肩書にぶら下がっている人間ほど、その重みを自らの地力と錯覚しやすいものだ。一方、4番タイプは自身の実力がよくわかっているから、そもそも早期退職には手を挙げない人が多い。

組織内での序列は本人の努力ではいかんともしがたく決まってしまう面が否めない。だから2番を目指せと言われても「はい、そうですね」と言える人は多くはないだろう。

でも、3番のゾーンの人にも2番を目指せと言うかといえば、話は別だ。普段から意識して市場価値に軸足を置いておくことで、転職市場という貴重なオプションを利用できる余地が生まれる。筆者はこれからの時代、不毛な同期との社内出世レースに血道を上げるより、そうしたキャリアデザインこそが、個人が充実した人生を送る鍵だと考えている。

筆者の知人に、大学卒業後、従業員数200人ほどの中小企業の総務部でキャリアをスタートさせた人間がいる。

「利益を生まないコスト部門は査定成績を抑える」という方針のもと、5年間ほとんど昇給しなかったそうだが、その間、採用から労務管理まで裏方業務をすべてこなせる人材になり、4年前に早期退職制度を使って辞めた。その後、大手企業系列に転職し、今では課長に昇格もしている。

今年度の年俸は1,200万円だそうだが、目先の評価にこだわることなく、早くから市場価値に軸足を置いた結果だろう。

「いらない」と言われた職場に残ってもいいことはない

筆者は先に「組織内ではメンバーのパフォーマンスはたいてい2:6:2に分かれる」と述べた。だから、全員を上位2割のスター社員だけで固めようとしてもあまり意味はなく、下位2割を追放したところで必ずしも全体のパフォーマンスが向上するわけではない。

とはいえ、企業が早期退職を募集する際には、ほとんどの場合、事前に「誰を残して誰を辞めさせるか」の線引きを終えているものだ。もちろんあくまで決定権は社員自身にあるのだが、会社側は面談などを通じて事前プランに近い振り分けを進めていくことになる。

仮にそうしたケースで、会社が辞めさせたいと考える側に入ってしまった場合はどうすべきか。従来の終身雇用的価値観からすれば、石にかじりついてでも残った方がいいと考える人の方が多そうだが、筆者はそれが個人の幸せにつながるとは考えていない。

というのも、そうした選別で辞めさせる対象となってしまった以上、その後の組織内でのキャリアパスは事実上頭打ちとなり、よくて現状維持、業績次第ではいつまた肩を叩かれる対象となってもおかしくはないからだ。

高齢化の現状を見れば、恐らくこれからのビジネスパーソンは70歳まで現役で働くことを考えねばならないはずだ。とすれば、70歳まで仮にしがみつき続けられたとしても、それは本当に目指すべきキャリアデザインなのだろうか。

仕事の達成感も成長の喜びも組織との一体感もすべてを投げうってひたすら「雨風をしのぐこと」だけを追求し続けることが正しいキャリアデザインだとは、筆者にはどうしても思えない。

だからこそ、組織の側から愛想をつかされたら、快く次の一歩を踏み出し辞める。もちろん、自らのキャリアアップに向け早期退職を利用するためにも、日々社外との接点を保ち、市場価値を意識したキャリア形成を心がけておくことが、充実したキャリアを形成するために欠かせない視点だというのが筆者のスタンスだ。

今回のポイント
早期退職のような退職優遇制度は、社内評価より市場評価の高い人間にとって、とても魅力的な制度だ。普段から社内評価より市場価値に軸足を置いておくことで、そうした選択肢が増えることになる。
これからますます終身雇用が形骸化し、一方でビジネスパーソンは70歳まで現役で働かねばならない時代が来るだろう。そうした時代には、今座っている椅子にこだわるより、仕事内容にこだわるキャリア形成を心がけた方が長い目で見れば充実した人生を送れるはずだ。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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