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30代以降も成長する人、伸び悩む人

30代というのは、キャリアの重要なターニングポイントだ。これはマネジャークラス=幹部候補に選抜される年齢であるという意味でもそうだし、その後にどういうキャリアを磨いていくかが決まるタイミングでもあるからだ。

今回は後者について考察しておこう。

余力をどう振り分けるかでキャリアの伸びしろは決まる

どんな会社でも、就職して10年も経つと一通りの手順や全体像が見えてくるものだ。結果、よく言えば仕事に対して余裕が生じ、悪く言えばマンネリに陥ることになる。その時の余力をどう使うかで、そこから上に行くか、そこで停滞するかが決まると言っても過言ではない。

筆者が尊敬する人事マンの一人に、某大手メーカーのグループ企業に中途で入社した人物がいる。仮にA氏としておこう。彼は無名大学から中小企業を経て大手に中途入社した苦労人で、入社後も処遇に甘んじることなく、英語や中国語の習得といった自己啓発に余念がなかった。ちなみに留学経験こそないものの、どちらも日常会話なら問題なくこなせる水準だ。

そんなA氏は新たな職場で奇異の目で見られたらしい。特に上司である課長からは「うちなんて海外展開してない子会社なんだから、語学を磨いても使い道はないぞ」とまで言われたという。

だが、3年後に東南アジアに拠点を設置するにあたり、A氏は管理部門を総括するポジションとして課長代理に抜擢され、見事に成果を上げた。その後、元上司だった課長はリストラ(取引先への転籍)され、今ではA氏が課長ポストに就いている。

このケースは、まさに「余力をどう振り分けたか」で明暗がくっきり出た典型と言えるだろう。現状に甘んじて何もせず、ハンコを押すだけのルーチンワークをするか、それとも常に変化へのアンテナを高くして、いずれ必要となるであろうスキルを磨いておくかで、10年後のポジションは決まると言っていい。

そういう努力をしていない人間の方が過半数を占める会社こそ、いわゆる“大企業病”と呼ばれる組織だ。

ちなみに、ある会社が大企業病かどうかを一発で判断できるとても簡単な方法がある。テーマは何でもいいから(有益そうだがある程度ハイレベルな)任意参加の社内研修を実施してみるのだ。参加率が低いようなら、その会社は大企業病に罹患している可能性が高い。

きっと欠席者は「自分は忙しいから」とか「今の自分には必要ないから」といってあれこれ理由を並べるだろうが、きっと彼らは会議でもあれこれ理由をつけては新たな提案に反対するタイプだろう。

もちろん、30代以後は「人生を楽しむ方に余力を振り分ける生き方」もアリだろう。ただし、そうした生き方にはリスクが伴うことも理解しておくべきだ。

組織が早期退職や配置転換といったリストラをする場合、当然ながら事前に「残すべき人材」と「辞めさせる人材」のセレクションは終えているものだ。その時に、ルーチンワークしかしてこなかった人材は当然ながら後者に回される可能性が高い。

なぜなら、ルーチン化できるということは、誰かもっと低コストな人に容易に発注できるということであり、場合によってはシステムに置き換えてしまえるということだからだ。

日本企業の管理部門そのものも90年代半ば以降にずいぶんとスリム化されたが、やはり切られたのは給与計算や社会保険料計算といったルーチン業務だった。そうしたフィールドにあえて身を置くというのなら、低付加価値の人材として真っ先に身を切られる覚悟はしておくべきだろう。

生涯現役時代に、軸足のないキャリアは悲劇である

そしてもう一つ、筆者が多くの人に対して、キャリアの伸びしろを伸ばしておくことを勧める理由がある。ここでは仮に、30代以降もマンネリ化することなく、常に課題をイメージして自身のキャリアを伸ばす努力をしている人を“プロフェッショナル”と呼ぼう。

と書くと、プロスポーツ選手じゃあるまいし、と思う人もいるかもしれないが、国内での処遇に甘んじることなく海外リーグに挑戦する野球やサッカー選手の姿勢こそ、ビジネスマンがもっともお手本とするべきものだと筆者は考えている。どんな仕事であっても、お金をもらっている以上、「自分はプロじゃないから」という言い訳は通用しない。

さて、そうしたプロフェッショナルであり続けようと努力する人生と、会社から降ってきた仕事を淡々とこなすだけの人生、どちらが充実しているだろうか。

ごく短期間のバイトのようなものなら、淡々とこなすだけでよいだろう。でも、定年までの数十年間を向き合って過ごすことになる“仕事”を、単なる作業として受け身で流すか、それ以上の何かになすべく努力するかは、きっと人生そのものの充実度に大きく影響してくるに違いない。

ちょうど昨年から、年金支給開始年齢の段階的な65歳への引き上げがスタートし、定年の実質的な65歳への引き上げも始まっている。

筆者の知る限り、60歳前後のサラリーマンで、この事実を、もろ手を挙げて歓迎している人は一人もいない。理由は簡単で、彼らは(余命期間を20年とすると)残りの人生の1/4が強制的に会社に召し上げられたことになるためだ。中には喫茶店を開いたり、キャンピングカーで全国を回る計画を立てていたのに、それらを諦めたという人もいる。

いや、彼らはまだいい方かもしれない。恐らく今50歳未満の世代は、年金財政ひっ迫によって、少なくとも70歳までは働き続けねばならない時代が到来するだろう。

22歳から70歳までの約50年間、人生でもっとも長い時間を、他者から与えられた役割の上で過ごすことが果たして幸福なのだろうか。主体的に自らデザインしたキャリアを歩み続ける方が、はるかに充実した人生であるはずだ。

自分は仕事に振り回される人生はイヤだ、という人は多いと思うが、そういう人であればこそ、長期的な視点を持って、30代から余力でスキルを磨き、プロフェッショナルを目指すべきだというのが筆者の意見だ。それをするかしないかが、30代以降も成長する人、伸び悩む人の分かれ目となる。

今回のポイント
30代になると余裕が出てきて、ルーチン的にしか働かなくなる人と、自分で課題を見つけたり目標を作ったりしてマンネリ化しないように努力する人がいる。その姿勢で、10年後のポジションは決まると言っていい。
企業がリストラを行う場合、置き換えの容易なルーチンワークばかりしている人間は真っ先にターゲットになりやすい。
現在50歳未満の人間は生涯現役が基本となり、老後=第二の人生は幻となるだろう。となれば、第一の人生をより主体的に自らデザインした方が、長い目で見て充実した人生となるはずだ。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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