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会社に使い捨てられない人とは、どんな人だろうか。恐らく思い浮かぶのは、会社の評価が高い人であろう。会社の評価が高いということは、ハイクラス人材でもあるというのは想像するに容易い。ハイクラス人材の明確な定義は存在しないけれども、ここでは年収800万円超で一定の権限や裁量を持つ人材としておこう。
会社に使い捨てられないためには、自分自身がハイクラス人材になってしまうのが手っ取り早い。少なくとも、その方法を知っておくに越したことはないだろう。
ハイクラス人材へのキャリアパスの一つは、年功序列によらないキャリアパスを持つ外資系企業や新興企業に就職し、30歳前後である程度の職歴とスキルを身に付けるコースだ。
年功序列という順番待ちをしなくていいというメリットは大きいが、逆に言えば高い意欲や行動力がなければ一歩も前に進めないコースでもある。
そもそも現状、日本企業のほとんどは職能給という「何をやらせるか、採る側も本人もわかっていないゼネラリスト養成コース」を維持しており、高等教育段階では明確なキャリアビジョンを植え付けることができていない。
近年は私学を中心にキャリア教育に力を入れる大学が増えているけれども、筆者の感覚で言うとまだまだこれからといった感じである。そうした人間がいきなりこちらのコースに進むのはややリスクがあるというのが筆者の意見だ。
余談だが、起業家やオピニオンリーダーの中には、早期の独立や起業を勧めている人たちが少なくない。いわく、これから大企業に入っても利益の収穫期はピークを過ぎていて意味がない、下積みより新しい会社で即勝負した方がいい…
筆者も、それはそれで正論だと思う。でも、それは大学在学時、最低でも20代半ばには明確なキャリアビジョンと目的地が見えていた人間に限った話であり、多くの“普通の人”には当てはまらないアドバイスのように思う。
では、そういうタイプではない人はどうすればいいのか。それは、従来型の日本企業で年功序列型のレールに乗り、自身で適時軌道修正を図りつつ、30代での高付加価値型人材への転換を目指すというコースだ。
この場合、特に明確なキャリアビジョンや目標がなくても、組織の中で一定レベルまではOJTで育成してもらえる。その中で、20代のできるだけ早い段階で自身のキャリアビジョンを定め、以後はそれに沿ってスキルアップしていけばいい。
一つの目安として、35歳という年齢は意識しておいた方がよいだろう。35歳というのは、専門職として第一線の主力となる年齢であり、また課長職以上のマネジメントに選抜され始める段階でもある。そこまでに、自分の担当する業務のコア業務を経験しておくことが絶対条件となる。
従来の日本企業では、係長→課長→部長と社内の職級が昇格しないとなかなか年収は上がらない仕組みだった。90年代後半以降、ベアがなくなってからはなおさらそうだ。大手であっても、課長か部長くらいにならないと年収1,000万円の大台にはなかなか乗らないのが現実だった。
だが近年、(ベース自体は年功色の強い職能給だが)一時金に、査定に応じて大きく差を付ける成果給が普及したことにより、この流れにやや変化が見られるようになった。
具体的に言うと、課長職あるいはその前段階のリーダー、係長クラスであっても、プレイヤーとして高いパフォーマンスを上げれば、上司を超える年収を手にする人間も珍しくなくなりつつある。筆者は、今後マネジメントクラスとは別に、そうした専門職のハイパフォーマー層が、ハイクラス人材の主流になると見ている。
そうした人材は能力的にはもちろん優秀なのだが、必ずしも組織に従順な優等生タイプというわけでもない。筆者の見たところ、評価面談などを通じ、実質的に上司と交渉して高評価を勝ち取っているタイプが多いようである。
筆者の知り合いの人事課長は、他業種からの中途採用にもかかわらず、事業所内での最高評価を2年間連続で取り続け、年収は1,200万円を超える。彼は「納得できない評価であれば自分はすぐに転職する」旨をあらかじめ上司に伝えているそうだ。
要するに、組織のコア業務に食い込み、組織にとって欠かせない人材になると同時に、転職市場を通じていつでも転職の自由を行使できる余地も獲得しているわけだ。
ハイクラス人材の肝とは、この「組織人の強み」と「転職市場での強み」という両輪がしっかりかみ合っている点にあるというのが、筆者の見方だ。
もう一つ、両輪をフルに回すために留意しておきたい点がある。それは、組織人としての役割の変化だ。
2014年、大手電機メーカー数社が、相次いで社内における年功序列制度の廃止をリリースした。特に戦後日本を代表するモノ作り企業であった日立のそれは、一つの時代の終焉を感じさせるインパクトを持って受け止められたように思う。
この流れはこれからすべての業種に波及するだろう。だが、この背景にあるもっと本質的な変化を見誤ると、これからのキャリアデザインが台無しになりかねない。
年功序列とは過去の功績の積み重ねに対して報いるというシステムで、必然的に従業員は組織のために尽くす従属的関係となる。後払いの報酬を長期間にわたり組織に預ける形となるためだ。
一方で、そうでない組織であれば、報酬はタイムリーに現金などで支払われることになるから、従業員と組織は対等に近い関係となる。人材的に言うなら、尽くす人間から使える人間が評価される時代に、徐々に移行していくということだ。
もちろん、会社側ははっきりとそうした宣言は行わないだろう。相変わらず会社都合での全国転勤やローテーションを求められるだろうし、有給返上や長時間労働といった滅私奉公も要求されるだろう。
でも、その先に待っているのは、会社に使い捨てられるだけのオチかもしれない。長い目で見れば組織から評価される人間は、あくまでもその時点で「使える人間」となるはずだ。
筆者の知る限り、日本企業でハイクラス人材として活躍する人たちは(意識してかどうかはわからないものの)尽くすのではなく使える人材になることでその地位を手にしているように見える。
多少わがままだろうが社風に合わない面があろうが、しっかりしたキャリアビジョンを持ち、そのために要求すべきは要求する。案外、それがハイクラス人材への近道、もっと言えば多くの人にとって、使い捨てられない人材になるための近道なのかもしれない。
城 繁幸(じょう しげゆき)
人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、
『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。
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近年、転勤に抵抗を覚える若者が増え、企業の側も、転勤のない勤務地限定コースを用意したり、原則として同意のない転勤は命じないという方針を立てたり、さま...
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