転職ノウハウ

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ハイクラスな会社の辞め方

いざ転職しようと決めたとき、入社先の企業のことばかり考えてはいないだろうか?今後のキャリアを思うと、今いる企業の「辞め方」も変わってくる。というわけで、今回はワンランク上の辞め方についてまとめてみたい。

筆者の経験から言って、キャリア上級者ほどきれいな辞め方をする傾向がある。そうなる理由は簡単で、彼らハイクラス人材は、転職の美しさもまた自らのキャリアの一部となることをよく理解しているためだ。

一方で、それ以前のキャリアデザインがいま一つ上手くいっていない人ほど、転職ではドタバタし、場合によっては会社や上司と揉めてしまうケースも目立つ。

そうした人間は、転職=人間関係や社内評価の清算といったネガティブな動機である場合が多く、そうした“脱出”に際して周囲に気を配る余裕が持てないためだろう。引き際の見事な人材は、それだけで周囲から一目置かれるものなのだ。

さて、筆者が「できるな」と感じる美しい会社の辞め方、ポイントは以下の3つだ。

立つ鳥、跡を濁さず

昔ながらのことわざではあるが、これはそのまま現代企業社会にも当てはまる。もちろん、道徳的に云々という意味ではなくて、ちゃんと理由がある。

まず、引き継ぎを中途半端でほったらかしたり、上司と喧嘩別れして跡を濁してしまったりすると、それはそのまま個人の市場での評価にマイナス影響となる可能性がある。

特に年収で800万円以上、マネージャークラスの人材なら(まったく接点のない畑違いの業種にでも行かない限り)悪評として残ってしまうことになる。もちろんハイクラス人材を目指している人も、心に留めておくべきだろう。

「ああ、〇〇さんね、前の会社ではひどい辞め方だったらしいよ」 「そういえば、いろいろ噂もあったよね」 みたいな話が、どこかしらの接点から漏れ伝わっていくものだ。

また、勤務地も業種も違うからといって100%安心はできない。2000年代に入ってからだいぶ減ったとはいえ、今でも中途採用に際し、前職の会社にコンタクトを取って勤務状況や退職理由などを確認する会社は存在する。

普通は余計なトラブルは抱え込みたくないから当たり障りのないことを言ってお茶を濁すものだが、無用なトラブルの種をまいてきた後なら、ここぞとばかりにリベンジされる可能性もある。

さらに跡を濁してきた人は、転職先の企業からしても期待外れな人材で終わる可能性が高い。企業は安くはない金額を払ってわざわざ外部から高給取りを採用しようとしているわけだから、転職者に対しては単なる業務スキル以上のプラスαを期待しているものだ。一例として、それは、前職で培った人脈であったり、取引先とのコネであったりする。

優秀で顔の利く人材を採用したおかげで、前の会社とコラボプロジェクトが始動した、なんてケースをしばしば聞くが、これなどは本当にいい辞め方をしたおかげだろう。

逆に跡を濁してきたおかげで前職および取引先からは出入り禁止などとされてしまった人は、転職先を深く失望させるに違いない。

お土産を残しておく

筆者が次に美しい辞め方だと感じるのは、退職前にお土産を残していくことだ。といっても、もみじ饅頭やうなぎパイを置いてこいと言っているわけではない。

転職というのは、ある意味、組織に対して言いたいことを言える最初にして最後のチャンスでもある。それまで気づいていたけれど、指摘できなかった課題や問題点をわかりやすい形で明示し、可能ならある程度解決の道筋をつけておく。そういう意味での“お土産”を残すのである。

これは辞められる組織からも「退職されたとはいえ、やはり彼はいい人材だった」と再評価されるきっかけになるし、これからの自己のキャリアに対してもいい勲章となる。

筆者の知人に、新卒以来十年にわたって勤めた企業を離職するに当たり、人員計画の資料作成から計画立案までの業務フローを大幅に見直すことで工程を半分以下に削減する改善書を作り、実際にある程度実行したうえで転職した人がいる。経営側と現場のどちらからも感謝されているから、これほど美しい辞め方もないだろう。

ちなみに本人曰く「自分が凄いわけじゃなくて、みんな業務プロセスに無駄があるとはわかっていたけれども、しがらみがあって言えなかっただけ」だそうである。常に前向きに業務に向き合っておくことで、こうした置き土産も用意できるかもしれない。

査定が終わったタイミングで申し出る

最後に、ややテクニカルながら意外と忘れられがちなことを付け加えておこう。それは「いつ退職願を出すか」という問題だ。

一般に、退職願は最低2週間前まで、引き継ぎなどを勘案して1~2カ月前までに出すのが礼儀とされている。筆者も、それに異論はない。ボーナスの支給を待って退職するとなると、その1~2カ月前までに退職願を出しておくことになる。

ただし、企業によっては、退職の決まっている従業員に意図的に低い評価を押し付けるところが少なくない。理由は、予算管理上、部署ごとに相対評価をするルールとなっていて、事実上、成績に枠があるためだ。どうせ辞める人間ならフィードバックも適当に流して、残る人間に高評価を回したいと思うのが管理職の人情というものだ。

ただし、それはあくまで社内都合。労働者としては労働に対する報酬を要求するのは正当な権利であり、この場合は「跡を濁す」ことには当たらない。

というわけで、「うちの職場は退職が決まると査定が下げられる」という噂があるようなら、評価面談などが終了してから退職願を出すとよいだろう。会社にもよるけれども、おおよそボーナス支給の1カ月前には終了しているはずである。

まとめておくと、担当業務はきっちりと引き継ぎし、ミスも人間関係のトラブルも残さず、できれば古巣になにがしかの恩返しをしたうえで、きっちりと高評価で有終の美を飾りつつ新たな船出をする。これが、筆者の考える「できる人」の会社の辞め方である。

今回のポイント
ある程度ハイクラスな転職の場合、きれいな辞め方をしておかなければ後々のキャリアに障るリスクがある。
中途採用する側も、ハイクラスな人材を採用する場合、人脈やコネといった属人的要素にも期待しているものだ。前職とのパイプは尊重した方がいいだろう。
退職とは、会社に対して言いたいことを言える最初で最後の貴重なチャンスだ。それを前向きに活用するか、ネガティブに流すかで10年後のキャリアは大きく変わるだろう。
ボーナス支給後に退職するなら、査定終了後に退職願を提出するのが安全だ。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。

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