特集

転職ノウハウ

「会社との価値観が合わない」と苦しむ求職者を理想の企業と出合わせたコンサルタントの手法とは?

今回のコンサルタントは、株式会社ジンジブの草場 勇介さん(以下敬称略)です。これまで築き上げてきたクライアント企業とのつながりの中から、求職者の意向にぴったりの案件を創出した今回のサポートを振り返っていただきました。

求職者プロフィール
Bさん、男性、転職当時33歳。国公立大学を卒業後、学習塾を展開する中堅の企業に入社。数学の教科指導、校舎長としての教室運営、全社的なICT化の推進や映像授業の先駆的な取り組みを一人で推進するなど活躍。信頼できる経営者の下、経営に関与できるチャンスのある会社で経営幹部として働きたいと転職を決意。
cross
紹介先企業プロフィール
大正時代創業の老舗和菓子メーカーであるR社。現在では和菓子に加え、洋菓子、パンの製造販売を行っている。創業100周年を前に、ご高齢の社長から次期社長へ経営のバトンタッチを検討。社長交代後は海外展開や、社内の制度改革などを積極的に行っていきたいと考えており、その右腕となる人材を求めていた。

企業との価値観が合わずに苦しみ、挑戦できる環境を求めて転職を決意

――まずはBさんについてお伺いさせてください。Bさんの職務経歴書をご覧になってスカウトしたとのことでしたが、理由はどういったものだったのでしょうか?

草場勇介

草場:弊社では、企業の人事担当の方から頂く通常の求人案件とは別に、企業の経営者の方から直接「経営幹部もしくは経営者としての素質を持った人材が欲しい」という要望を頂くことがあります。Bさんは学習塾の校舎長として教室運営で抜群の実績を残されたほか、ICT化の推進、新規の売上向上施策の立案など、魅力的な実績が職務経歴書に詰まっていたこと、また、ご本人が経営幹部としての転職を希望されていたことから、お声掛けしました。

――Bさんは前職の学習塾でも意欲的に仕事に取り組まれていたようですが、何がきっかけで転職を決意されたのでしょうか?

草場: Bさんは、前職の学習塾で積極的に新しい企画を立案しては取り組んでいたのですが、その一方で、経営陣としては新しいことに積極的に取り組んでいくという姿勢はあまりなかったようでした。Bさんは早くから、いずれ経営に関わりたいという思いをお持ちだったようですが、経営方針の部分で前職の経営陣との価値観が合わずに苦しまれておりました。

――Bさんのご状況やご希望をお伺いになられて、どう思われましたか?

草場:会社経営は未経験ではありますが、これまで仕事に対し精力的に取り組まれてきたご経験や、経営への熱意などをお伺いしていく中で、この方なら経営者の方々にもご紹介できると感じたため、その場で「絶対にBさんの次の転職先を見つけます」とお約束しました。

会社経営は未経験。それでも経営層を希望する求職者に、コンサルタントが案件を創出

――Bさんへの案件紹介は御社が保有されている求人から行われたのですか?

草場:いえ、Bさんは業界にはこだわらず経営幹部としての転職をご希望でしたが、教育業界の経験しかなく、また会社経営も未経験だったという点で、残念ながら手持ちの案件では紹介できるものがありませんでした。そのため、少々時間はかかってしまいますが、私どもの経営者とのつながりの中からBさんに合うと思われる企業にお声がけし、紹介することにしました。

――案件を創出されたということですね。しかし、条件に合う案件となるとそう簡単にはいかないのではと思うのですが、具体的にはどのような流れで創出されたのでしょうか?

草場: 私どもは普段から、クライアントには定期的に足を運び、直接お話を伺う機会を設けています。そうしたお付き合いをさせていただく中で、経営者同士のつながりを伝って、ほかの企業の経営者からも求人に関するご相談を頂くことがあるのですが、そこでBさんをご紹介したところ、R社さまの社長から次期社長の右腕にどうかという今回のお話が挙がりました。

――なるほど、これまで築いてきた信頼関係から挙がってきたお話だったのですね。では、Bさんにご紹介されたR社さまについて詳しく教えてください。

草場:R社さまは大正時代に創業した老舗の和菓子メーカーで、現在は、和菓子、洋菓子、パンの製造販売を地域密着で行っています。現在経営に当たられている社長がご高齢になり、創業100周年を前に、次期社長へのバトンタッチをここ数年以内にと考えられているところでした。

次期社長は海外展開や新規事業構想、社内の制度改革などを精力的に行っていきたいと考えており、その右腕となる方を探していらっしゃいました。次期社長は34歳でしたので、Bさんの33歳というご年齢からも、これから苦楽を共にする経営のパートナーとしてふさわしい人材なのではないだろうかと思いました。

何より大切なのは“求職者と企業、双方の持つ価値観のマッチング”

――Bさんに案件をご紹介するにあたり、案件の内容は吟味されたかと思うのですが、その際どのような点を重視されたのでしょうか?

草場:私どもコンサルタントのスタンスとして、求職者ご本人の価値観や志向を、会社の持っている理念とフィットさせるのが第一であると考えています。今回はR社さまの次期社長の右腕にというお話でしたので、次期社長が持っている経営や仕事に対する考え方を聞いた上で、これはBさんご自身の考え方とも合うのではないかと思いました。

――Bさんの反応は、いかがでしたか?

草場: 次期社長の経営や仕事に対する考え方を中心に、R社さまの現在の状況や今後の事業構想などをお話したところ、とても興味を持っておられました。前職の学習塾で感じておられた価値観の相違も、次期社長の経営や仕事に対する考え方がBさんご自身のものと近いという点で、問題なく解消できそうだと思われたようです。

――Bさんには好感触だったのですね。

草場:そうですね。実は次期社長も他業界から転職して来られたのですが、最初から経営層にと迎えられていたにも関わらず、実際の現場を知るために1年間は現場で働かれていたようです。そういった点にとても共感しておられました。また、次期社長の思いの中には和菓子をアジアに広めたいというものもあり、それがBさんの「新しいことに積極的に取り組みたい」という思いに通ずるところも大きなポイントでした。

――経営に関わる人材であれば、会社のキモになるポジションかと思います。やはり、人物を把握する為に面接も回数を重ねられたのでしょうか?

草場:いえ、今回、面接は実質1回でしたね。

――1回ですか!?

草場:ええ。面接は1回だったのですが、経営層の人材紹介を行うときは、面接をした上で、実務的に問題ないだろうと確認できてからではありますが、面接の後にできる限り会食の場を設けるようにしているんです。会食の場は面接の場と違い、経営方針や仕事観について熱い話が聞ける絶好の機会になりますから。また、企業側も求職者側も普段の雰囲気を知ることができますので、お互いにやっていけるかどうかを判断する貴重な材料にもなります。

――なるほど。今後経営に関わる人材として、面接では計りきれない雰囲気の面でのマッチングも重要視されているのですね。会食を終えて、お互いの印象はいかがでしたか?

草場:今回私は会食の場に同席することができなかったので、次期社長とBさんのお二人で食事に行かれたのですが、経営やお互いの仕事観について非常に熱い話で盛り上がられたようです。後日Bさんに電話を掛けて様子をお伺いしたら、「今度、R社さまのイベントに参加することになった」と報告いただきました(笑)。

――それは驚きですね! そのように積極的に交流されていたということであれば、この案件は良い方向にまとまるなという流れだったのでしょうね。

草場:そうですね。価値観が合ったということもあり、お互いに一緒に働きたいと考えていたようです。Bさんは業界も会社経営も未経験なので、これまでも次期社長がされてきたようにしっかりと現場を見て、一から業界を学び、会社経営のスキルを身に付けていきたいというお考えでした。

“未経験”の部分を補うのは、求職者の持つこれまでの“経験”

――今回の内定、とんとん拍子に決まった印象を受けますが、R社さま側はBさんの会社経営が未経験という部分を、特に気にされてはいなかったのでしょうか?

草場:たしかに会社経営という部分では未経験でしたが、それ以上にこれまでのご経験から即戦力になれる部分がたくさんあり、企業側はそちらを高く評価されていました。

草場勇介

――高く評価されたポイントはどのような点だったのでしょうか?

草場:例えば、R社さまの直近の課題として、数ある店舗の労務管理体制や従業員の教育体制を改善したいというものがあったのですが、Bさんはアルバイトのシフト管理や教育にも経験がありましたので、すぐにでも任せたいとお考えでした。また、校舎長としての教室運営もされておられましたので、数字にも強く、今後アジアへの進出を計画するに当たって予算を組んでいく上でも、能力的にぴったりの存在であるとのことでした。

――まさにそのときのR社さまに必要なご経験をお持ちだったのですね。内定後、Bさんの様子はいかがですか?

草場:次期社長の下で、元気に働かれているようです。「Bさんが来てくれて良かった」とR社さまにはとても喜んでいただいています。

――双方共に喜ばれているようでよかったですね! それでは最後に一言お願いします。

草場:単に求職者さまのご経験を元に求人をマッチングするだけなら、コンピュータでもできます。私たちコンサルタントがクライアント企業にコンスタントに足を運んでお話を聞いていると、信頼関係はもちろん、そこからほかの経営者を紹介していただいたりとつながりもどんどん広がっていきます。そういったつながりの中で、求職者ご本人の価値観や考え方とクライアント企業の理念やそこで働く人の価値観などをマッチングさせることこそに、我々コンサルタントの介在価値があると考えています。

クライアント企業との直接の対話を大切にしているコンサルタントだからこそ、求職者に本当に合った企業をマッチングできるのですね。コンサルタントの魅力をより知ることができるインタビューとなりました。草場さん、これからも求職者のためにがんばってください。

今回のまとめ
  • コンサルタントは、案件がないところからでも、求職者に合い、その企業が必要としていると考えれば、ときには求人を創出して提案してくれる。
  • コンサルタントは、求職者の経験と企業が求める人材条件だけではなく、求職者の仕事への思いとそれを受ける企業の理念をマッチングしてくれる。

※コンサルタントによってサポート内容は異なりますのであらかじめご了承ください。

※スカウトサービスにおいて個人を特定できる情報は閲覧できません

草場 勇介

草場 勇介(クサバ ユウスケ)

株式会社ジンジブ
慶應義塾大学卒業後、レイス株式会社にてヘッドハンティング事業に従事。
その後26歳で起業し、医療、介護、教育、NPOを中心に事業展開を行う。
2014年には(株)ジンジブを人と未来グループの一社として設立。
大手紹介会社では出来ない、転職者一人ひとりとの対話を重視したエージェントサービスを展開。