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転職ノウハウ

退職から1年以上が経過した40歳。苦戦していた状況を好転させたコンサルタントのサポートとは?

今回のコンサルタントは、株式会社ゆーらむの遠藤 こづえさん(以下敬称略)です。40歳で離職期間1年以上の求職者の長所を見抜き、内定に導いたサポートを振り返っていただきました。

求職者プロフィール
Wさん、男性、転職当時40歳。大学卒業後、広告会社の法人営業担当として4年間勤務した後、化学品商社にて機能化学品の営業に約12年携わる。知人が立ち上げる新しい会社に誘われて退職までしたが、直前になって入社できない状況に陥り、再就職活動を開始。40歳という年齢と1年以上のブランクがあることで苦戦をしていた。
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紹介先企業プロフィール
化学工業薬品・合成樹脂・ガラス繊維・石油製品、損害保険代理業などを手掛ける総合商社T社。設立以来、黒字を続けており無借金経営の安定企業であるが、化成品を扱う部署の営業職で、前任者の退職による欠員が発生し、その補充を行うことが急務となっていた。

40代という年齢や離職期間はやっぱり不利になる!? 

――まず知りたいのですが、一般的に40歳以上の年齢ですと、転職は難しくなるイメージがあります。実際はどうでしょうか?

遠藤:今回のように営業職ですと、紹介先企業のご担当者さまからはキャリア形成を図る観点から「35歳まで」とリクエストをいただくことがほとんどです。

背景として、人件費が高くなっていくということもありますが、人は歳を重ねていくにつれて、本人としては素直なつもりでも、上の立場の人が扱いにくくなってしまうことがどうしてもあるようです。「会社の方針や計画に合わせて、育てがいのある25歳から35歳。出来れば25~26歳の人材がいいな。」と仰っしゃることが、やはり圧倒的に多いですね。

――今回の求職者Wさんの場合、まさにそのような年代ですが、紹介先の企業様も若手を求められていたのでしょうか?

遠藤:今回の紹介先企業のT社さまも同様で、化成品系の営業経験がある「若手」の人材を求められていらっしゃいました。あわせて、先方からは「即戦力」と「人柄重視」というキーワードをいただいていたのですが、今回はここが大きなポイントとなりました。

――Wさんとはどのように出会われたのですか?

遠藤:コンサルタントサイトに登録されたWさんの職務経歴書に目が留りました。

40歳という年齢はT社さまのご希望よりも少し高めでしたが、化成品営業の経験者であるWさんは人材市場の中でも貴重な存在で、即戦力で活躍できることは大きなポイントとなります。T社さまからいただいた「人柄重視」という部分にさえマッチすれば、ご紹介できるのではないかと感じました。まずはお会いしてみたいと思い、私からWさんにスカウトメッセージをお送りしました。

求職者を勇気づけ、自分の言葉で話せるようになるプロのサポート

――なるほど。多少不利な状況でも、即戦力となるような経験があれば可能性が広がるということですね。実際にお会いしてみて、Wさんはどのような印象だったのでしょうか?

遠藤:最初の面談では、どのような質問を投げかけてもWさんはとつとつとした話し方で、第一印象では覇気がまったく感じられませんでした。T社さまへの紹介を検討するにあたって、スムーズな会話のキャッチボールができない状況では、面接でも実務でも不利になってしまいます。

それでも、いろいろとお話を聞いていくなかでその理由もわかってきました。化成品系の営業職は、求人サイトを探しても募集が少なく、何とか探して応募をしても40歳という年齢がネックになってなかなか面接までたどり着けなかったようです。転職活動の出口が見つからず、自信をなくし、そのために覇気が失われていたことなどがわかりました。

第一印象は暗い印象。それでも、何かふとした拍子にWさんがニコッと笑ったのですね。その笑顔がすごく良くて、笑顔を見せてもらったところから急に親近感が増したので「Wさん、笑顔が良いですね」、「その笑顔、すごく良いですよ」、「面接ではずっとその笑顔を見せましょう」と、思ったことを素直に伝えました。

――まさに転職支援のプロによる観察眼、そして求職者を勇気づけるコミュニケーションですね。面談後はどのようなサポートを行ったのでしょうか?

遠藤:Wさんとの距離を縮めながら、Wさんの人間性をたくさん引き出すことを意識しました。

素敵な笑顔と前職までの実績が裏付けているように、Wさんはもともと人柄も良く、今は単に自分のことを自分の言葉で分かりやすくアピールするための準備ができていないだけだとわかりました。

そして、Wさんには面接に備えて「自己紹介文」を作るように依頼をしました。「例えばこんな感じでやると良いですよ」という見本として、それまでWさんから聞いたことをもとにしたWさんの自己紹介を私がその場の即興で披露し、完成イメージだけ伝えた上で実際に書いてもらいました。

――見本を即興で披露するとは、なかなかユニークですね。自己紹介文の作成を依頼したねらいはどこにあるのでしょうか?

遠藤:「自分がこれまで一体何をやってきたのか?」ということを一回整理して欲しかったのです。振り返り、整理をしてみることで「自分の強みってこういうことだったのか!」という発見があり、文章化ができます。反対に自分の弱みも整理することで、それに備えた防御をすることもできるようになります。

例えば「2つ前の会社では何をしていたの?」、「誰にも負けない強みは?」、「入社したら何をやりたいの?」というような、いざ急に聞かれると困ってしまうような質問も、自己紹介文をしっかりと書いておくと、該当する部分を自己紹介文から抜き出す要領で、しっかりと自分の言葉で話せるようになります。

――自己紹介文を書いた後、添削なども行うのですか?

遠藤:書いていただいた自己紹介文の添削も行いますが、考えるきっかけを提供することを重視して「コーチング」に近いアプローチを大切にしています。

Wさんにも、今の自分の「見せ方」あるいは「魅せ方」について、「あることを淡々と書いていくのではなく、自分自身を上手く売るためのプレゼン資料だと思って書いてみてください」と、自己紹介文を書く上での考え方を示しながら、根気強く準備を行いました。

また、お話が面接まで進んだタイミングで、弊社の他のコンサルタントを面接官に見立てて、「模擬面接」を必ず行います。最初にお会いした時のコミュニケーションに問題があった方であっても、これらの準備をしっかりと行っていくことで、内定率は確実に上がっていきます。

Wさんのその後と、似たような状況の方へのエール

――その後、無事にT社さまから内定をいただけたWさんですが、どのようなことが決め手となったのでしょうか?

遠藤:最終的にはとても良いマッチングとなりました。

今回T社さまからご相談をいただいたのは既存顧客中心の営業職だったのですが、「人柄重視」というキーワードの具体的な部分として、お客様に対して腰が低く丁寧な対応ができることや、クレーム対応などの経験者であることも、業界の特性として重視されていらっしゃいました。

Wさんがちょうどそのような営業スタイルや経験をお持ちであることも面談を通じて分かりましたので、その辺りについてもしっかりとアピールをしました。

また、何よりも実務経験者ですので、どのようなことをしてきたか、入社後はどのようなことができるのか、事前準備の甲斐もあって自分の言葉でしっかりとアピールすることができ、内定を勝ち取れたと考えています。

――Wさんの入社後の評判はいかがでしょうか?

遠藤:入社後1年が経過したタイミングで、T社のご担当者さまから「Wさんが課長に昇格した」とご連絡をいただきました。それも、社内で「要だ」と言われている存在になっているというのです。

Wさんは今でも時々顔を見せにきてくださるのですが、「Wさん、最初はあんなに暗かったのに~!」と冗談を交わすぐらい、いつもすごく良い笑顔で、はつらつとしていて、マッチングとして今回は本当に大成功だと感じています。

――遠藤さんのサポートの賜物ですね。

遠藤:ありがとうございます。更に嬉しいことに、社内におけるWさんの評判が良いことで、T社さまにはまた別の求人のご相談をいただいており、さらに「T社にWさんを紹介した紹介会社」として、なんとT社さまのお取引先企業さまからもご相談をいただいております。

――それは本当に素晴らしいですね。Wさんの第一印象と入社後では別人のようですね。

遠藤:やはり離職期間が長くなると、誰とも口を利かなかった日なども出てきて、気持ちも表情も暗くなり、いざという時に自分を売り込むための言葉が出なくなりがちです。

しかし、先日お会いしたWさんは「働く場所を得て、これまでの経験も活きていて、今、すごく自由にやらせてもらっていて、この会社に入って本当に良かったです!」と嬉しそうに語ってくれました。転職支援のプロとして、私もとても嬉しく感じました。

――最後に、Wさんと同じように苦戦をされている方に向けてエールをお願いします。

遠藤:はい。今はすごく求人が増えており、ご自身が40代という年齢であっても、全く問題ないと私は思うのです。弊社は比較的年齢の高い方の支援を得意としていますが、例えば離職をしていて、年齢も40歳を過ぎてくると、応募に忙しくて企業研究などをしていないと思うのです。

しかし、やはり就職したいと思ったら、応募する会社のホームページを人一倍よく見て、競合他社の情報もしっかりと得て、「うちのホームページを隅々までよく見てくれているんだなぁ」と思ってもらえるぐらいよく勉強をすることが必要だと考えています。

志望動機も同じです。企業研究は本当に時間がかかりますので、その時間を使ってより多くの企業に応募したい気持ちになると思いますが、「競合他社にはない貴社のここに魅力を感じています」と自分の言葉で伝えられると、最終面接まで残る可能性が高くなってまいります。

20代ならば何となく内定を勝ち取ることもあるかも知れませんが、40代になったら努力した者だけが内定を勝ち取れます。自己紹介文を作成して自分のキャリアを振り返るとともに、企業研究を十分に行って「よく見ているなぁ」と思ってもらい、前向きな熱意が伝わることが内定への近道だと思います。

比較的年齢が高い層であっても、長所を見抜き、自分の言葉でアピールできるように求職者を支援するコンサルタントならではのお話を伺うことができました。遠藤さん、これからも求職者のためにがんばってください。

今回のまとめ
  • コンサルタントは、一見不利な状況であっても、求職者が持つ長所を客観的に見抜き、アピールするためのコーチングをしてくれる。
  • コンサルタントは、求職者と紹介先企業の両方に喜ばれたいと考えており、求職者と真剣に向き合ってマッチングをしている。

※コンサルタントによってサポート内容は異なりますのであらかじめご了承ください。

※スカウトサービスにおいて個人を特定できる情報は閲覧できません

遠藤 こづえ

遠藤 こづえ(エンドウ コヅエ)

株式会社ゆーらむ
損害保険会社で営業を経験した後、外資系の人事として全国の中途採用を1人で担当。
その後、大手紹介会社で紹介コンサルタントとして修業を積み、紹介会社の設立・運営と新たな挑戦と失敗を経験しております。
株式会社ゆーらむでは、若手からマネージャークラスまで幅広い年代の方をサポートしております。