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転職ノウハウ

自信を失い夢に蓋をした求職者が、再び夢の入口に立つまでのコンサルタントのサポートとは?

今回のコンサルタントは、株式会社hapeの蔵野 紘二朗さんです。学生時代からの夢を叶えるために飛び込んだ業界で大きな挫折を経験した求職者。そんな求職者が再び夢を叶えるためのサポートを蔵野さん(以下敬称略)に振り返っていただきました。

求職者プロフィール
Kさん、男性。転職当時30代前半。新卒で人材派遣会社に入社し活躍。その後、求人サイトなど人材に関わる事業を展開する企業に入社するも、リーマンショックの影響で退職。まったく異業種に転職したが、一向に増えない給料とやりがいに欠ける業務に疑問を感じ、自身と家族のために転職に臨む。
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紹介先企業プロフィール
法人向けの教育事業や研修をお手伝いする事業を基盤に、転職支援など人材系ビジネスも手がけ急成長中のB社。支店展開や新規事業立ち上げによる人材不足、事業展開の鈍化、若手社員の教育が追いつかないなど、積み重なっていくばかりの課題解決のために、中堅社員の採用が急務となっていた。

コンサルタントが読み解く、求職者のストーリーとは?

――まずは今回の求職者であるKさんについて、蔵野さんが転職のサポートをすることになったきっかけを教えてください。

蔵野:マイナビスカウティングに登録された履歴書と職務経歴書に目を留め、こちらからスカウトしたのがきっかけです。希望職種が主に営業系だったものの、第四希望にキャリアカウンセラーとあり、「なぜだろう?」と興味を持ちました。

職務経歴書に目を通すと、大学卒業後に人材派遣会社に入社、会社都合で退職。あらたに求人ビジネスの会社に契約社員として入社したのち契約解除により退職。そしてまったく異業種に転職したことを知りました。

おそらくKさんの最初の就職は順風満帆で、給料がどんどん上がっていくなかでの労働者派遣法の改正、その影響で業務停止、会社都合による退職。次に契約社員として就職した求人ビジネスの会社もリーマンショックによる市場の冷え込みで契約解除。挫折して、まったくの異業種に転職したものの、まだ人材系のビジネスに後ろ髪を引かれているのではないかと想像しました。

――第四希望の職種にまで目を通したことも驚きですが、そんなストーリーのようなものが浮かぶものなのでしょうか?

蔵野:コンサルタントとして、政治や経済、業界のトレンドなど、常に多方面にアンテナを張っておりますし、たくさんの方の転職をサポートしてきましたので、その知見と求職者さまの情報を重ねると、自ずとストーリーが見えてくるんです。

登録された情報は隅々まで読み込みますし、情報の細部に次の転職へのマッチングに関する大切なキーワードが潜んでいることもよくあります。このようなストーリーを持っておくことで、よりマッチングの確度の高い求人情報を紹介することができるんですよ。

――なるほど。とはいえ、そのストーリーは仮説ですよね? 実際のKさんは、どのような経験をされていたのでしょう。

蔵野:おっしゃるとおり仮説ですが、大きく外れることはほとんどなかったですね。ただ、実際にお会いしてみると、大きな挫折を経験したことで、想像以上に自信を喪失されていらっしゃいました。

Kさんは、キャリアカウンセラーになり、将来的には自ら講演を行うなどして、多くの人を幸せにしたいという夢を学生時代からお持ちだったそうで、そのような背景から人材系のビジネスに入られていました。

初めての就職で順調なスタートを切り、半年で支店長、2年目で立ち上げ支店長まで任されたところでの事業停止、それに伴う退職。2社目では、1社目同様に成果を出せるものと営業活動に邁進するも、リーマンショックで企業が次々に採用をストップし、結果が残せないまま契約解除による退職。

あの時期は致し方ない状況だったと思うのですが、Kさんはご自身を「不甲斐ない」と責め立て、「人材系のビジネスには向いていない」と道を諦めたとのことでした。

また2社目の退職と同時期に、奥さまの妊娠や、お母さまの重い病と他界という重大な人生の転機にも見舞われておりました。そのようなご経験から、「とにかく楽になりたい」という一心で、ご自宅近くにある、まったく異業種の企業に入社されたそうです。

ただ、会社の業績は芳しくなく、毎日18時に帰れるのは良いものの、薄給で在職中一度も昇給することもなく、やりがいもないまま30歳を過ぎてしまった。そんな状況を変えたい、奥さまと二人のお子さまのために一家の大黒柱としてがんばりたい、と転職を決意されたそうです。

希望職種については、最寄りの職歴を踏まえて営業系をあげていたものの、やはりキャリアカウンセラーへの夢は持ち続けていらっしゃるご様子で、未練はあるものの「諦めた道」と、その夢に蓋をしていらっしゃるようでした。

失った自信を取り戻し、再び夢に挑戦する求職者

――そんなKさんが、B社さまでキャリアカウンセラーとして転職を果たし、再び人材系のビジネスに関わることになったわけですが、どのようなサポートをされたのでしょうか?

蔵野:どのような職種に就くにしても、まずはKさんの自信を取り戻すことが必要だと思い、これまでの職歴を一緒に振り返ってみることにしました。

Kさんが挫折するに至ったのは法改正や経済状況といった外的要因がほとんどでしたので、ご自分を責めすぎないようにお伝えしました。また、そのような挫折した経験を持っているのは強みであると解釈するようにもお伝えしました。

同時に、1社目での実績、2社目での絶望的な市場のなかでも成果を出そうと諦めなかった姿勢などを振り返りながら、実力を十分お持ちであることを確認すると、Kさんはかなり前向きになったご様子でした。

次に今回の転職の目的を明確にしていきました。収入アップや10年後もやりがいを感じていたい、仕事とプライベートを充実させたい、胸を張って生きていきたいなどの声をピックアップしていき、具体的な目標は「年収のV字回復」「男として、父親として誇れる仕事をする」と確認しました。

面談のなかでは営業系の求人も含めて複数を詳しくご紹介しましたが、「男として、父親として誇れる仕事をする」と確認した段階で、「諦めた夢にもう一度挑戦する」と決断され「B社さま1社に絞って活動したい」となりました。

法人向けの教育や研修のお手伝いが基盤事業のB社さまですので、キャリアカウンセラーとしての夢が叶うだけではなく、昇進すれば講師として人の役に立つことができるという学生時代からの夢を叶え得る求人でしたので、当然の結果だったかと思います。

伝えきれない求職者の思いを伝えるために

――Kさんの転職にかける思い、B社さまへの情熱はよくわかりました。一方で採用する側のB社さまには、Kさんをどのように推薦したのでしょうか?

蔵野:実は、マイナビスカウティングでKさんの職務経歴書を拝見したときに、B社さまとマッチングの可能性が高いのではという予感があったのですが、実際にお会いしてみて、やはりB社さまに相応しい人材だと確信しました。

B社さまは、相次ぐ支店展開や新規事業の立ち上げで人材不足に陥っており、若手社員の教育も追いつかず、中堅社員の採用が急務となっておりました。

Kさんは年齢的にもちょうど良かったですし、他者のために一生懸命になれる性格や挫折したご経験など、B社さまの若手の良き先輩として、そしてキャリアカウンセラーとしての要件も十分に満たしておりました。

ただ、今回の求人は配属先の上司が20代の女性とあらかじめ決まっており、そこでのマッチングが非常に重要でした。中堅となるような年齢の人材を採用すると上司の方が年下となってしまいますので、B社の採用担当者さまは大変悩まれておりました。

上司となる方は、とても能力の高い方で、仕事の細部にまで丁寧さを求めるような几帳面さをお持ちの方なのですが、Kさんは年齢の上下にこだわるような方ではありませんでしたし、上司の方の几帳面な部分を大きく受け止められるような器量もお持ちでしたので、B社さまに相応しい人材としてご紹介させていただきました。

――上司となる方のことなど、B社さまの内情にかなりお詳しいようですね。

蔵野:長らく採用のお手伝いをしておりますので、採用担当者の方はもちろん、そのほかの従業員の皆さま、事業課題、社風、環境までよく存じ上げておりますし、B社さま以外のクライアントについても同様です。求職者さまと企業さまをマッチングするうえで、当たり前のこととは思いますが。

――いま伺った上司となる方との相性をはじめ、Kさんの学生時代からの夢、挫折、人生における重大な転機、直近の仕事への不満や焦燥感、他者のために親身になれる性格など、どの情報も今回のマッチングでは大切なものですが、すべてをB社さまにお伝えするのは大変そうですね。そのあたりは、どうされたのでしょうか?

蔵野:そうですね。Kさんご本人からすべてを伝えられる場も時間もないでしょうし、言いにくいこともあるかと思いましたので、それらをまとめて推薦状としてB社さまにお渡ししました。

――推薦状はどの求職者にも書くものなのですか? また、どんな推薦状を書いたのか、Kさんにはお伝えしたのですか?

蔵野:サポートするすべての求職者の皆さまに推薦状をご用意していますし、紹介先企業さまに提出する前に、必ずお見せしています。内容に間違いがないか確認をしていただくのが目的なのですが、「自分のセールスポイントがよくわかった」など、感謝のお言葉をよく頂戴いたしますね。Kさんにも大変喜んでいただけました。

――入社後のKさんは、どのようなご様子ですか?

蔵野:年収は百万円以上アップしましたし、学生時代からの夢の入口にまた立てて、とても満足されています。また入社後ほどなく社内の賞を受賞され、その後、講師に昇進することもでき、しっかり成果を出しながら夢の実現に向かっておられます。

また、これもマッチングした部分ではあるのですが、B社さまは家族持ちの従業員が多く、休暇を取りやすいなど、Kさんが働きやすい環境でもあったため、ご家族と一緒に充実したプライベートも過ごされているようです。

Kさんからは、入社後もご連絡をいただきますし、一緒に飲みに行くこともあります。出会いから現在に至るまで私のことを信頼いただいたことはコンサルタントとして仕事冥利につきますね。

偶然ではありますが、私も二人の子供を持つ父親ですので、Kさんの境遇や思いに大きく共感することが多々ありました。内定のご連絡を差し上げたときに、電話の向こう側でご家族の皆さまが大きな声をあげて喜ばれていたことが強く印象に残っています。

求職者の皆さまが転職活動を始めるまでには、さまざまな背景やご事情があります。企業側からのオーダーと求職者さまの職歴を単にマッチングさせるのではなく、そのような背景、ご事情を理解してマッチングできることもコンサルタントの介在価値だと思います。今回のようなサポートを続け、これからも求職者の皆さまの夢を叶えていきたいと思います。

まだ会ってもいない求職者のストーリーを導き出す知見や、転職の目的を求職者と一緒に明確にしたり、求職者のための推薦状を書いたりするなど、またも知らなかったコンサルタントのサポートの一面を知ることができました。蔵野さん、これからも求職者のためにがんばってください!

今回のまとめ
  • コンサルタントは、求職者が転職を決意するまでの経緯を深く理解し、転職の目的までも一緒に考えて企業をマッチングしてくれる。
  • コンサルタントは、求職者の伝えきれない思いや事情、そこから導き出されるセールスポイントを書面にまとめて、企業に推薦してくれる。

※コンサルタントによってサポート内容は異なりますのであらかじめご了承ください。

※スカウトサービスにおいて個人を特定できる情報は閲覧できません

蔵野 紘二朗

蔵野 紘二朗(くらの こうじろう)

株式会社hape 代表取締役
2005年に社員育成と採用支援を強みとする株式会社ジェイックに入社。20代向け人材紹介部門に配属。営業職に従事。
その後、営業マネージャ、大阪支店長、事業部長、取締役を経て、2013年11月に株式会社hapeを設立。代表取締役に就任。
述べ5000名以上の就職支援に携わり、経営層やエグゼクティブ層との強いネットワークを持つ。