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転職ノウハウ

コンサルタントが思い描いた求職者と企業の未来とは!?

今回のコンサルタントは、株式会社ハッピー・マークの廣瀬 信康さんです。提示されたイメージに囚われずに40代の人材を紹介して、求職者の思いをかなえたサポートを廣瀬さん(以下敬称略)に振り返っていただきました。

求職者プロフィール
Sさん、女性。転職当時40代前半。金融会社に新卒で入社。約4年間、来客に対する窓口取扱い業務を担当したのちに、従業員わずか数名のベンチャー企業へ転職。同社で20年弱、経理財務、人事総務、売上原価集計、営業事務から社内雑務までを1人でこなす。100名規模の企業に成長貢献して執行役員に就任、その後退職。経理や人事の経験を生かした転職に臨む。
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紹介先企業プロフィール
関西を中心に英会話スクール、パソコンスクールを全国展開している教育業界一筋約40年のH社。大手教育関連企業との業務提携を控え、社長をはじめとする経営層は多忙を極めていた。これまで社長が担当してきた財務業務を全面的に任せられる人材を確保して、経営層がよりダイナミックな活動に注力できるかが、今後の企業発展のカギとなっていた。

経営層が多忙を極める、成長前夜の教育関連企業

――さっそくですが、今回の紹介先であるH社さまについてお聞かせください。廣瀬さんは、どのようなオーダーをいただいていたのでしょうか?

廣瀬:H社さまは約40年、関西を基盤に英会話スクールとパソコンスクールを全国展開してきた教育業界一筋の企業です。このH社さまに、東日本を中心に教育関連事業を展開してきたある企業が西日本での事業強化のために業務提携を申し入れ、その契約寸前でのご依頼でした。

H社の社長さまはいつも全国を飛びまわっているお忙しい方なのですが、業務提携を控え、一層多忙な日々を送っていらっしゃり、これまで手掛けてきた財務業務を徐々に手放して、最終的には全面的に任せられるような人材を探しておられました。求める実務経験からすると「30代半ばくらいの方になるのでは?」とイメージされていました。

――「30代半ばくらい」とのことですが、今回マッチングしたSさんは40代前半でしたよね? どのようなご事情があったのでしょうか。

廣瀬:徐々に任せていけるような人材をご希望でしたが、はじめから全面的に任せられるような人材を採用できれば、H社さまは今回の業務提携を足がかりにもっとダイナミックなビジネス展開ができるだろうと思いました。ただ、そんな人材は滅多にいないだろうと思われ、控えめのオーダーになったのだと思います。

ご依頼後、マイナビスカウティングで経理財務の実務経験をお持ちの方を探したところ、すぐにイメージに合致した人材が数人みつかりましたが、さらに視野を広げて探したところ、人事、営業事務なども経験されているSさんの職務経歴書が目に留まりました。H社さまの発展にもっと貢献しうる人物ならば年齢にこだわる必要はないと思い、Sさんにアプローチして、弊社での面談をセッティングさせていただいた次第です。

企業成長に貢献した求職者のキャリアが、まさか転職活動の壁に…

――Sさんは、前職では執行役員だったとのことですが、なぜ退職され、転職活動されていたのでしょうか?

廣瀬:Sさんは前職の会社の設立初期に入社され、従業員わずか数名から100名以上の規模になるまでの成長に貢献された方でした。その会社は上場の準備までしていたそうですが、リーマンショックの影響で上場を断念し、Sさんご自身が中心になって人員整理をしたのち、かねてより希望していた独立に向けて退職されたとのことでした。

1年ほど独立の準備をしていたそうですが、時期が悪かったこともあり軌道に乗らなかったため、再び転職という道を選択し、以前経験したような「企業の成長に再び貢献して、つくりあげる喜びを味わいたい」と、新たな活躍の場を探してらっしゃいました。

――そうでしたか。かなりのキャリアをお持ちですので、順調に転職活動をされていたのではないですか?

廣瀬:積極的に活動されていたようですが、なかなか面接までたどり着けず、うまくいっていないご様子でした。会社の大きな成長に貢献したようなキャリアをお持ちの方のなかには、自信に満ちあふれた方が少なくないのですが、この自信が“トゲ”として捉えられ、企業から避けられてしまうことがあるようです。

Sさんが面接までたどり着けていなかった状況から察するに、そのような先入観で敬遠されていた部分もあったのではないかと思います。また、年齢の部分でもハンデを感じてらっしゃるようで、年収を当初の希望より数十万、百万、百数十万円と徐々に低く設定されたとのことでした。

実際にSさんにお会いしてみると、年齢の上下、ポジションの上下、男女などに関係なく、どなたとでも良好な関係を築けるような物腰の柔らかい人物でした。このような方が書類選考で落とされ、希望年収まで下げて転職活動をしているのは大変残念なことだと思ったのと同時に、想像をはるかに超えた多彩な経験をお持ちのSさんが採用されれば、さらなる企業成長が望めるのではとワクワクしたのを覚えています。

面談ではH社さまの業務内容はもちろん、経営層の皆さまのこと、働いている従業員の皆さまのこと、社風、H社さまのスクールに通われている生徒の皆さまのことを詳しくお話させていただきました。

求職者と企業の未来のマッチングこそが“人材採用”

――業務内容、経営層の皆さま、従業員、社風というところまではともかく、生徒の皆さまのことまで廣瀬さんはご存知なんですか!?

廣瀬:はい。生徒の皆さまというのは、H社さまのお客さまになるわけですが、採用をお手伝いしているクライアント企業さますべてにお願いをして、お客さまにも取材させていただいています。

――そこまでこだわる必要があるものなのでしょうか?

廣瀬:私たちコンサルタントが人材採用をお手伝いするためには、その企業の人事担当になったつもりでなければできないと私は考えています。求職者のいまの経験や能力だけを見て、マッチングするのではなく、その人の仕事観や思いにも目を向けて、企業の価値観、未来とマッチングする。これが人事の仕事だと思うのです。

人事担当の目線で、人材採用をお手伝いするには、クライアント企業さまに深く入り込み、その先のお客さまのことも理解することは当然だと思うんですよね。もちろん、そこで仕入れた情報は、求職者の皆さまにできる限りお伝えするべきだとも考えています。

――なるほど。H社さまの詳しい情報を聞いたSさんは、どんなご様子でしたか?

廣瀬:「企業の成長に再び貢献して、つくりあげる喜びを味わいたい」というご希望をお持ちのSさんでしたので、成長期にあるH社さまで、これまでの様々なご経験が生かせそうと、とても好意と期待を持たれたご様子でした。

また、Sさんは“どんな人たちと働くか?”ということをとても重視されておりましたので、「経営層から従業員まで、とにかく気持ちの良い皆さまです」とお伝えしました。

「気持ちの良い」というのは、例えば荷物や郵便を届ける方など、出入りするすべての方に「いらっしゃいませ」と従業員の皆さまが声をかけるようなところです。すべての方をお客さまとして扱ってくださる、そんなお話をさせていただいたところ、Sさんは「とても高揚してきた」とのことでした。

――H社さまが「気持ちの良い会社」だということはよくわかったのですが、Sさんが「高揚してきた」とまでおっしゃったのは、なぜなのでしょうか?

廣瀬:前職でお勤めだった会社が急成長した時期があったそうなのですが、その時の社内がまさに“気持ちの良い”状態だったそうなんです。Sさんは過去のご自身の成功体験から、成長期の会社の匂いのようなものを感じ取られたからだと思います。

――そんなSさんに対する、H社さまからの評価はどのようなものだったのでしょうか?

廣瀬:まず面接前に「ご紹介するのは40代前半の方」とお伝えしたところ、少し驚かれていたのですが、「廣瀬さんのご紹介だったら」と面接していただけることになりました。一次面接は、社長さま自らが行ったのですが、面接直後にお電話をいただき「想像以上の人材に出会えた、すぐにでも採用したい!」と、またも驚きのお言葉をいただきました(笑)。

実務経験やSさんの人柄が評価されたというのはもちろんですが、おそらく面接でのSさんの“発信”が社長さまに好印象を与えたのだと思います。

選ばれにいくのではなく、選びにいくのが一次面接

――“発信”とは、どういうことでしょうか?

廣瀬:面接をセッティングした求職者さまは、私が自信を持ってクライアント企業さまに紹介できる、言ってみれば企業側から選ばれるべき人材ですので、一次面接は選ばれにいくのではなく、企業を選びにいっていただきたいと皆さまにお伝えしています。そのためには、自分がどんな人間で、仕事に何を求めて、どのように貢献したいかを “発信”する必要があると。

――先ほど「人事の仕事」として求職者の「仕事観や思いに目を向ける」というお話がありましたが、求職者から企業の価値観や思いにアプローチするということですね?

廣瀬:そのとおりです。求職者さまがしっかりと自分のことを“発信”して、本当に必要な人材であれば、採用担当者はしっかりと応えてくれるものです。求職者の皆さまは、働いていきたい企業か、一緒に気持ちよく仕事をしたいと思う方たちかを判断するイメージです。ワクワク感を大切にしてほしいと思います。

Sさんは“発信”できる方でしたので、それほどアドバイスはしなかったのですが、つくりあげたいという思いや、気持ちの良い社風の大切さなどで社長さまと思いがつながったのだと思います。

その後、二次面接に進みましたが、面接というよりSさんにお願いしたい業務のすり合わせと条件面の調整をするための面談となりました。希望年収をかなり低く設定していたSさんでしたが、実績に相応しい年収の相場をH社さまに事前にお伝えしていたこともあって、下げる前の希望年収に近い条件で合意することができました。

――Sさんは、H社さまで活躍されているご様子ですか?

廣瀬:もちろんです! 目論見どおり、社長さまをはじめとする経営層が経営戦略に注力することができ、H社さまの業績は急成長中です。Sさんも再び企業の成長に貢献する夢をかなえ、喜びを噛み締めてらっしゃるご様子です。

求職者が望む働き方を実現して、その求職者を採用したことで企業が発展していく。当たり前のことではありますが、これをサポートするのがコンサルタントのミッションです。SさんとH社さまをマッチングさせた今回のサポートは、実に当たり前のことでありながらも、私たちの仕事の本質も示す好例になったと思います。これからもこのような良縁をつくり続けていきたいと思います。

クライアント企業の先にいるお客さまへの取材や、 一次面接での“発信”によるマッチングなど、またもコンサルタントの知られざるサポートが垣間見えるインタビューとなりました。廣瀬さん、これからも求職者のためにがんばってください!

今回のまとめ
  • コンサルタントは、クライアント企業の価値観、方向性、経営層、社員、雰囲気などを把握して、経験や能力、さらには求職者と企業との仕事観もマッチングしてくれる
  • コンサルタントは、求職者の実績と可能性を踏まえて、あるべき年収を企業側に提示してくれる。

※コンサルタントによってサポート内容は異なりますのであらかじめご了承ください。

※スカウトサービスにおいて個人を特定できる情報は閲覧できません

廣瀬 信康

廣瀬 信康(ひろせ のぶやす)

株式会社ハッピー・マーク 代表取締役
人材業界で16年にわたり転職支援を行っています。
弊社では、従業員満足度調査、顧客満足度調査などの企業分析も行っており、そこから得られる独自の情報も求職者の皆様にご提供しています。 また英語の面接対策指導、履歴書・職務経歴書添削を得意としおります。 近年は教育業界から人材募集のご依頼をいただくことが増えています。
転職に向けたステップをひとつひとつ丁寧、慎重に支援いたします。