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転職ノウハウ

今の会社でハイクラスに行けるかどうかの見極め方

日本型組織で働く以上、「自分がどこまで出世できるか」は常に意識しておくべき最重要事項と言っていい。なぜなら、年功の積み重ねを40代以降のポストで報いるというのが日本型雇用の本質であり、出世が頭打ち=報酬をとりっぱぐれるということだからだ。

特に30代にとって、これはとても重要なテーマだ。おおかたの日本企業で幹部候補選抜は30代で行われ、そこで部長職以上のハイクラスに行ける人材と、非管理職のまま飼い殺される人材の選別が行われることになる。要するに組織内の出世に白黒つくわけで、自分が黒だとわかって、かつ、それに納得できない人は、速やかに転職するしかない。

ここ数年はずいぶん40代以上の求人案件も増えたが、あまりモタモタしているようだと、年齢的に選択肢が大きく狭まることにもなりかねない。

というわけで、転職すべきかを速やかに判断するためにも、今回は、組織内にいながら自分が上に行けるかどうかをできるだけ効率的に見極めるポイントをまとめておこう。

20代より30代の所属部署が重要

よく「新人として最初に配属される部署で出世が決まる」的なことを言う人がいる。実際“出世コース”といった言葉があるくらいだから、金の卵専門のエリート養成コースがあるに違いないと考える人も少なくないのだろう。

だが結論から言うと、一管理部門にすぎない人事が採用段階でキャリアの白黒つけて事業部に引き渡すなんてことはまずありえない。

だから、20代のうちは「自分は花形部門じゃないから」なんてことでくよくよせずに、キャリアの地力を磨くことに専念するべきだ。泥臭く見える仕事ほど、磨けば後になって高い付加価値を生むものだ。

ただし、30代半ばになると話は変わってくる。一般に、管理職登用は各事業部門が自分たちで候補者を決め、人事部門が最終チェックをするケースが多い(人事部門がどの程度コントロールできるかは会社によって差がある)。とにかく、重要なセレクションは、事業部門内での候補者調整だ。

いまどき管理職ポストなんてどこの会社でも慢性的に不足しているから、当然ながら同じ部門内でし烈な候補者争いが起こることになる。部門内に空きポストが出るたび、部課長はもちろんのこと、事業部長や本部長といった上級役職者も巻き込んで「順番から言えばうちの山本主任が相応しい」「いやいや、実績から見ればうちの鈴木主任こそ適任じゃないか」といったやり取りが活発化するものだ。

だから、そうした場合に備えて、たいていどこの事業ユニットでも、30代になると幹部候補人材は広く名前が売れ、ハクもつきやすい部署に集める傾向がある。また、そうしておけば後の人事部門のチェックもパスしやすい。

というわけで、30代の事業部門内における部署の位置づけは、今後の伸びしろを占ううえで非常に重要となる。与えられた仕事ならなんでも律儀にこなすのは20代までで、それ以降はある程度自分の希望を明確にして、メインストリームに近づく努力をすべきだろう。

キーワードは「40歳」と「後輩」

所属部署に加え、年齢も、同じく重要なシグナルとなる。90年代までは一般的な管理職である課長昇格は40代が中心で、中には50代というケースも珍しくなかった。日本企業が年功序列的な秩序の維持を重んじていた結果である。だが、ここ10年ほどで日本企業の多くは伝統的な秩序の維持よりも組織の若返りに軸足を移し、管理職昇格は30代が中心となっている。

この傾向は今後さらに進むと予想され、逆に40歳以降の昇格は抑制されるだろう(実際、人事部門の内規で40歳以上は管理職には登用しないとしている企業は少なくない)。

そこで、35歳を過ぎたあたりから、その年の新任課長の入社年次は注視しておくべきだろう。自分より一年上の人間が上がり始めたらあなたはすでにスタートラインに立っていて、同期が上がったら既にホイッスルは鳴らされているはずだ。そして、2年以上下の後輩が昇格したら、レースはすでに終わったと考えるべきだ。

毎年どういう部署でどういう仕事をしている人が多く昇格しているか。そして、その人たちは入社何年組で、最年少は何歳か。そうした点を整理していくことで、本来は上級マネージャーたちが密室で決めている出世レースの概況が、おぼろげながらわかるはずだ。

最後は運次第というのが終身雇用制度

とはいえ、そうしたシグナルでも予想しがたい現実が往々にして起こるものだ。たとえば、誰もが認める優秀者で実績も申し分ない人でも、30代後半になって事業部門そのものが縮小し、ポスト自体がなくなるというケースはしばしば目にする。

逆に、まったく社内的に存在感のない部門に回されたものの、若手総合職自体が希少なため、35歳で全社最先発で課長昇格なんてケースもある。

要するに、後々のポストで報いる現行の人事制度では、どうやっても将来的な環境の変化には対応できず、成果と報酬のミスマッチが発生してしまうわけだ。

そう考えると、30代での人事動向をチェックしつつも、やはりいつでも社外に打って出られるよう、市場価値を意識したキャリア形成を心がけるべきだろう。逆にそういう人材ほど会社から見ても魅力的であり、ぞんざいには扱えないものである。

今回のポイント

30代半ばの所属部署や担当業務で、部門内でどれくらいのポジションにつけているのかはわかるものだ。
一般的に言って、40歳は出世レースにおける大きな節目であり、2年後輩の管理職昇格も赤信号と言っていい。
とはいえ、後のポストで報いる現行の人事制度では成果と報酬のミスマッチは宿命のようなもので、いざとなったら転職できるだけの地力をつけておくことが最終的な防御手段となるし、会社から見ても魅力的な人材となり得る。
城 繁幸(じょう しげゆき)

城 繁幸(じょう しげゆき)

人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。
人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』、終身雇用プロ野球チームを描いた小説『それゆけ!連合ユニオンズ』等。