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望まない人事異動の内示が出たら… やってみるべき?転職も視野に入れるべき?
会社員である以上、人事異動は起こりうると分かりつつも、世の中には、人事異動が理由で転職を考える人は少なくないようです。異動には、想像していなかった仕事内容への配置転換から、縁もゆかりもない地方への転勤まで、さまざまな種類があります。望まない人事異動を受けた経験のある方を対象に、異動や転職で良かったこと・悪かったことについて聞いてみました!
調査方法/全国の20〜49歳の会社員(正社員・契約社員)を対象にインターネット調査
実施期間/2016年9月10日〜9月11日、回答数200名
望まない人事異動の内示を受けた経験がある
20代~40代の社会人200人に調査!
あなたが人事異動を望まなかった理由を教えてください。
<仕事編>
- 今の仕事が好きだから(45歳・男性)
- 一度も希望したことのない職種だった(40歳・男性)
- 未経験の職種だった(46歳・男性)
- 自分の能力以上の業務内容だった(35歳・男性)
- 今の仕事がようやく一人前になってきたところだった(29歳・女性)
- 今、手がけているプロジェクトを最後までやり遂げたかった(35歳・男性)
- 新しい仕事が将来のなさそうな内容だった(38歳・男性)
- 新しい仕事内容がつまらなかった(34歳・女性)
- 新しい仕事が自分の不得意分野だった(29歳・女性)
- 事務職で入社したのに営業異動はつらい(33歳・男性)
- 営業で入社したのに製造職への異動はひどい(36歳・男性)
- 設計から労務へのキャリアパスは理解ができない(45歳・男性)
- SEで入社してテスト部門の異動は納得できない(38歳・男性)
- トラブル対応専門の部署にいきたくない(28歳・女性)
- これまでの経験・スキルを一切活かせない職種への異動(34歳・男性)
- 築き上げてきた固定客を失いたくない(45歳・男性)
- デスクワークから肉体労働がキツイ(49歳・男性)
- 昇格人事ではあったがいきなり未経験職種で管理職は現実的に務まらない(36歳・男性)
- 残業時間が多すぎる部署だった(35歳・女性)
<人間関係編>
- 異動先の上司が嫌い(32歳・女性)
- 人間関係が悪いと有名な店舗への異動だった(33歳・男性)
- 異動先の上司のパワハラを知っていた(33歳・女性)
- 女性ばかりの部署でトラブルが多い(45歳・男性)
<環境編>
- 全く希望しない勤務地だった(38歳・女性)
- 異動先の社宅の老朽化が激しく住みたくない(47歳・男性)
- 地元から離れたくない(28歳・女性)
- 東京育ちだから田舎勤務が無理(33歳・男性)
- 家を新築したばかりだった(48歳・男性)
- 新しい勤務先への通勤が片道2時間かかる(39歳・男性)
<家族・プライベート編>
- 子供が小さいため単身赴任をしたくない(49歳・男性)
- 親の介護ができなくなるから(34歳・女性)
- 単身赴任をして家族と離ればなれになりたくない(48歳・男性)
- 夫の収入がメインであるため転居を伴ってまで続ける気はない(34歳・女性)
- 妻が妊娠中のため環境の変化を避けたかった(37歳・男性)
- 彼女と離れたくない(30歳・男性)
- 彼氏と離れたくない(29歳・女性)
- 結婚を控えていて、この異動で破綻するかもしれなかったから(38歳・男性)
<その他>
- 給料が大幅にダウンするから(45歳・男性)
- 降格人事(44歳・男性)
- 地方への左遷人事(48歳・男性)
- 明らかな報復人事(49歳・男性)
- 人事異動の意図が不明で説明もない(36歳・女性)
- 転勤がないことを前提に入社したから(45歳・男性)
- 誰かが退職するたびに、必ずその穴埋めにされた(38歳・女性)
- 前任者を辞めさせて、その立場へ異動させようとしたことが許せなかった(48歳・女性)
望まない人事異動の内示を受けて、会社に望んでいないことを伝えましたか?
伝えた…65%
伝えていない…35%
人事異動を受けたことをきっかけに転職や退職も視野に入れましたか?
視野に入れた…76%
視野に入れていない…24%
そのまま異動した方に質問。異動してみて良かったですか?悪かったですか?良かった、または悪かった理由を教えてください。
良かった…45%
悪かった…55%
良かった理由
- 耐えて、新しいスキルを身に付けた
- 新しい人間関係に恵まれた
- 一生懸命取り組んで成果をあげることが出来た
- 地方は物価が安く、意外と住みやすかった
- 元の仕事に戻ることができた
- 忙しいが給料があがった
- 定時で帰宅できるようになった
- 出張が多くて嬉しい
悪かった理由
- 単身赴任で家族に会えないのが辛い
- 精神的苦痛が多く体調を崩した
- 離婚した
- 残業がない部署で、生活が苦しくなった
- 同じ会社とは思えないほと、仕事のビジョンがなく、上司のやりたい放題、ハラスメントの横行に違法行為など耐えられなかった
- 人の多い事業所で人間関係に悩んだ
- 仕事に対応できる能力がなかった
- 人間関係がとにかく悪く、社内の雰囲気も暗い
- 彼女にも家族にも会えず辛かった。地方の方言や慣習に馴染めなかった
- これまでの経験・スキルが一切活かせず、雑用係のような仕事だった
異動をきっかけに転職をした方に質問。転職して良かったですか?悪かったですか?良かった、または悪かった理由を教えてください。
良かった…75%
悪かった…25%
良かった理由
- 自分の裁量で仕事が出来る範囲が増えた
- 年収は下がったが家族と地元に残れた
- 前職の会社でリストラと給与削減が行われていると聞いた
- 年収は下がったが休暇が増えた
- 希望していた仕事に就けてやりがいがある
- 望まない仕事をするよりモチベーションを高く頑張れる
- 収入は減ったが、仕事のストレスや理不尽さは激減して健康になった
- 前職より条件が良く、プライベートも充実している
- 人間関係が楽になった
- 転勤の心配がない
- 年収が飛躍的にあがった
- 自宅から通える
- 明るい性格に戻った
- 嘘をつかなくても売れる商材を扱っている
- 地獄の人間関係から解放された
- 会社の規模は小さいが、いい人ばかりだ
- 今の会社で昇進している
- パワハラから解放された
悪かった理由
- 嫌な先輩がいて、人間関係でまた悩むことになった
- 倒産しそう
- 入ってみたら社風が合わなかった
- 年収が下がった
- 女性スタッフが少なく、肩身が狭い
- 会社の規模が小さく、コンプライアンスがゆるい
- 年収200万円ダウン
- 日々、繁忙期
「人事異動」とはそもそも何か?
組織では日々、中途採用や転職、定年退職などによる社員の増減に伴い、年齢や地位のアンバランスが発生しています。それを解消し、組織として最大のパフォーマンスを発揮するために、社員の所属している部署や勤務地、地位の変更を行うのが人事異動です。
そのような目的で行われているため、希望していた異動が叶う人もいれば、受け入れがたい異動を言い渡される人もいるでしょう。
まずは一般的には、どのような人事異動の目的があるのか詳しくみていきましょう。
人事異動の種類
1.適材適所の人材配置を行うため
仕事の役割に適していると判断される人材の配置転換をし、組織の成長・発展を促すため
2.人材育成のため
社員の長期的キャリア形成を目的とし、様々な経験やスキルを習得させ、能力開花を行うため
3.昇格・昇進
社員に新しい職務・役割を与え、出世させるため
4.降格・降任
社員の成績不振、能力不足のため、別の職務を与えるため
5.雇用の維持
組織再編や部門縮小などに伴い、雇用の維持を目的として、人員整理を行うため
6.懲戒処分
会社の規則に違反するような行為があった場合に、処分を行うため
人事異動を拒否した場合は解雇されるのか
一般的に正社員とは、長期的な雇用を前提としており、職種や勤務地の限定が無い限りは、定年まで様々な職種や職場を経験することが予定されているため、組織の人事異動命令権は強く肯定されています。
正当な理由がなく、人事異動を拒否する場合は、懲戒処分の対象となり、「懲戒解雇」になる可能性があります。
会社側と交渉をする場合はある程度の覚悟をもって行う必要があるでしょう。交渉する場合は自分自身の中で「これだけは譲れない」という明確な条件をもって交渉することが大切です。
人事異動を拒否できるケース
基本的には、日本では雇用規制が厳しいかわりに広範な人事権が認められており、ほとんどの会社では、異動の辞令が下された時点で拒否できない風潮があります。
しかし、あるケースによっては、正当に人事異動を拒否することが可能です。
Case1.入社時の条件と相違がある、契約違反のケース
入社時に取り交わした雇用契約書に限定した職種や勤務地での採用であることが明記されていれば、正当な理由がない限り、会社側の契約違反となりますので、拒否ができます。
Case2.やむを得ない事情があるケース
社員にとって不利益が大きすぎるケース、例えば親の介護をする人がその本人以外いない、子供が病気で決まった病院への通院が必要などの場合は人事異動を拒否できる可能性があります。ただし、不利益の度合いにもよるので、会社の配慮がどれだけあるか、そのケース別に決まることがほとんどでしょう。
Case3.不当な理由であるケース
わざと不向きな職務に就かせたり、社員が介護をしていることを知りながら遠方への転勤を命じたり、人事異動の目的が嫌がらせであると推測されるケースには異動を拒否できる可能性があります。ただしこのケースに限っては、事実確認や立証をするのが難しいため実現には困難を極めるでしょう。
これ以外にも、その社員でないと遂行不可能なプロジェクトがある、その社員に他の人にはない能力があるなどの理由の場合、相談する余地はあるかもしれませんが、よほど特別な事情でない限り、難しいケースの方が多いでしょう。
人事異動で起こりがちなトラブルケース
Case1.給与の変動に関するトラブル
職種が変更になったという理由で、給与が減額されることは、本人の同意がない限り認められません。しかし手当類(営業手当、勤務地手当)がなくなったという場合には、給与の変動を受け入れざるを得ないでしょう。
もし一方的な給与額の変更があった場合、就業規則や賃金規定などに基づいて変更されているか確認をしましょう。
特に定めはなく「職種が変わったから」「最近、業績が悪いから」などの納得しがたい理由の場合は、はっきりと受け入れられない旨を伝えましょう。それでも撤回されないようであれば、労働基準監督署、行政機関・専門家など然るべき場所に判断を委ねることも心に留めておきましょう。
Case2.昇進に関するトラブル
昨今では、かならずしも誰もが出世を望むわけではありません。給料に見合わない重い責任が伴ったり、転勤が頻繁にあったり、有給休暇が取得しにくくなることを懸念する人も少なくはありません。
しかし、このケースに関しては、正当な理由が無い限り拒否するのは難しいでしょう。昇進も業務命令の一環です。受け入れられない明確な理由があるようであれば、会社側としっかり話し合う必要があります。
人事異動がきっかけで、転職活動をする際に気をつけたいこと
1. 決まる前に退職するリスクを考える
在職中に転職活動を行う場合、面接の日程調整が難しい、早期入社が出来ないなどのデメリットは否めませんが、まずは収入があるので転職先が決まらなくても妥協をせず活動を続けることが可能です。
退職後の転職活動はすぐに希望する会社が見つかり採用が決まれば良いですが、活動が長引くと生活面への不安から焦りも生じるため、自分に適さない会社選びもしかねません。
不満や勢いに任せてアクションせず、自分に一番適した活動方法を十分検討してから、行動を起こしましょう。
2. 異動きっかけの退職は自己都合退職になる
会社都合退職とは会社側が経営不振やリストラ、倒産などを理由に一方的に労働契約を解除し、退職を余儀なくさせることです。
一方で自己都合退職とは労働者側が転職や結婚、妊娠、出産、家庭の都合などを理由に自分の意思や都合で退職を申し出ることです。
異動拒否での退職は、正当な理由がない限り、会社の指示、命令を受け入れられないということですから、会社都合ではなく自己都合退職に該当します。
自己都合の場合、ハローワークに離職票を提出後、待機期間7日と3カ月を経るまで失業給付金を受け取ることができません。反対に、会社都合の場合は、待機期間7日で最短の給付支給開始となります。
給付日数の期間も、雇用保険の被保険者期間や年齢によっては異なりますが、自己都合の場合、給付日数90~150日に比べて、会社都合の給付日数は90~330日と長く設定されています。
ただし会社都合退職の場合、転職活動の際に、「何かトラブルがあって解雇されたのか?」など、採用担当者や面接官にその理由を確認される場合があります。自己都合退職と比べて、より慎重に対策を練っておくと良いでしょう。
新しい会社の採用面接の際に退職理由をどう伝えるべきか
人事異動を拒否して退職した場合、採用面接の際に退職理由をどのように伝えるのが良いのか悩むところでしょう。受け入れる側としても、前職の退職理由はもっとも気になるところでもあります。あまりに実態とかけ離れた理由を述べると、前職と同じ事態に陥る可能性があります。いかなる理由にせよ、不平・不満ではなく前向きに理由を伝えることが大切です。
- 仕事内容が不満で退職
退職理由
「事務職から営業職に異動になったので退職しました」
ストレートに伝えすぎると、会社の処遇に不満があればまた直ぐに辞めてしまうのではないかという印象を与えてしまいます。
言い変え例
「入社以来、ずっと営業事務職として営業の方が働きやすい環境を作ることを心がけて取り組んできました。私は裏方として誰かのサポートに徹する仕事に大きなやりがいを感じており、今後も事務職としてスキルを高めていきたいと考えています。」
- 転勤が不満で退職
退職理由
「会社側は私が親の介護をしていることを知りながら地方転勤としたので退職しました」
やむを得ない事情があるにしろ、会社側が悪いという言い方をするのは得策ではありません。
言い変え例
「両親の介護をするのが私しかいないため、会社の業務命令を引き受けたいのは山々でしたが自主退職しました。同じ場所でずっと働けるのも御社を志望した理由の一つではあります。」
人事異動を自分のキャリアプランを考える良い機会とする
もし「新しい仕事内容についていけるか不安」「人間関係がよくないらしい」という不安感や噂で躊躇しているようであれば、次の仕事内容や職場環境に詳しい人に聞いてみるのも一つの手でしょう。
基本的には人事異動を機に、これまでとは異なる環境で働けることは、新しいスキルを身に付けたり、新しい人脈を築くチャンスです。よほど不当、やむを得ない事情がない限りは、前向きに捉えてみることをおすすめします。また次に、転職をしたいと考えたときに、経験の幅広さやスキルを身に付けたことは有利に働くでしょう。
是非、悲観するのではなく、この人事異動をきっかけに、自分は仕事においてどのようなキャリアビジョンを持っているのか、数年後どのような人材になっていたいのか、キャリア形成を図る上で今回の人事異動は本当に不必要なものなのかを考える良い機会としてください。
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正当な理由なき人事異動の拒否は認められない
正当な理由がなく、人事異動を拒否する場合は、懲戒処分の対象となり、「懲戒解雇」になる可能性があるが、中には拒否できるケースも存在する。
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人事異動で起こりがちなトラブルケースには注意
職種が変更になったという理由で、給与が減額されることは、本人の同意がない限り認められない。納得しがたい理由の場合は、はっきりと受け入れられない旨を伝えよう。
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基本的には人事異動はチャンスと捉える
これまでとは異なる環境で働けることは、新しいスキルを身に付けたり、新しい人脈を築くチャンス。よほど不当、やむを得ない事情がない限りは、前向きに捉えてみるのが得策。
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